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選択議定書2条(c)の解釈に関する資料作りのためのネタ帳(「child」「enfant」「niño」「ребенка」「儿童」「طفل」関連)。

---------------------------第1部。選択議定書の正文---------------------------

・日本では「児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書」と呼ばれている条約(以下、単に「選択議定書」というときはこの条約)の正文についてはhttps://treaties.un.org/doc/Treaties/2000/05/20000525%2003-16%20AM/Ch_IV_11_cp.pdf

・選択議定書の6種ある正文(英語正文・フランス語正文・スペイン語正文・ロシア語正文・中国語正文・アラビア語正文)の各2条(c)だけ抜き出すと以下のとおり。

「Child pornography means any representation, by whatever means, of a child engaged in real or simulated explicit sexual activities or any representation of the sexual parts of a child for primarily sexual purposes.」(英語正文)

「On entend par pornographie mettant en scène des enfants toute représentation, par quelque moyen que ce soit, d'un enfant s'adonnant à des activités sexuelles explicites, réelles ou simulées, ou toute représentation des organes sexuels d'un enfant, à des fins principalement sexuelles.」(フランス語正文)

「Por pornografía infantil se entiende toda representación, por cualquier medio, de un niño dedicado a actividades sexuales explícitas, reales o simuladas, o toda representación de las partes genitales de un niño con fines primordialmente sexuales.」(スペイン語正文)

「детская порнография означает любое изображение какими бы то ни было средствами ребенка, совершающего реальные или смоделированные откровенно сексуальные действия, или любое изображение половых органов ребенка главным образом в сексуальных целях.」(ロシア語正文)

「儿童色情制品系指以任何方式表现儿童正在进行真实或模拟的直露的性活动或主要为取得性满足而以任何方式表现儿童身体的一部分的制品。」(中国語正文)

「يُقصد باستغلال الأطفال في المواد الإباحية تصوير أي طفل، بأي وسيلة كانت، يمارس ممارسة حقيقية أو بالمحاكاة أنشطة جنسية صريحة أو أي تصوير للأعضاء الجنسية للطفل لإشباع الرغبة الجنسية أساسا.」(アラビア語正文)


・中国語正文については、上記のものとhttps://www.un.org/chinese/children/issue/crc_op1.shtmlに記載されているものでなぜか文言がかなり異なりますが、おそらく上記のものの方が正文。

・外務省訳はhttps://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/B-H1617-014.pdf。内容的には英語正文の日本語訳。あくまで日本語訳にすぎず条約の正文ではありません。

----------------------第2部。ウィーン条約法条約31~33条----------------------

・条約の解釈規則については、「条約法に関するウィーン条約」などと呼ばれている条約(以下、「ウィーン条約法条約」)の31~33条が定めている。

・ウィーン条約法条約の正文についてはhttps://treaties.un.org/doc/Treaties/1980/01/19800127%2000-52%20AM/Ch_XXIII_01.pdf。36条までの外務省訳はhttps://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/B-S56-0581_1.pdf

(注:とりあえず外務省訳の31~33条だけでも読んでおいてください。)

・ウィーン条約法条約31~33条は国際慣習法を反映したものまたは既に国際慣習法の地位を得ているというのが国際司法裁判所等などの判例。

http://ahkb22.blog112.fc2.com/category10-1.htmlに判例をいくつか列挙。ウィーン条約法条約31~33条については別の資料を作成予定。)

・そのため、選択議定書の当事国の中にウィーン条約法条約を批准していない国があっても、選択議定書はウィーン条約法条約31~33条に記載されているルールに従って解釈される。

------------------------第3部。選択議定書2条(c)の解釈------------------------

・第1章。「child」「enfant」「niño」「ребенка」「儿童」「طفل」の解釈。

・ウィーン条約法条約31条1項「条約は、文脈によりかつその趣旨及び目的に照らして与えられる用語の通常の意味に従い、誠実に解釈するものとする。」

・第1節。ウィーン条約法条約31条1項「用語の通常の意味」。

・いつの時点における「通常の意味」であるかについては、国際司法裁判所2009年7月13日判決(英語正文フランス語版。63~66段落)などによれば、原則として条約締結時における意味。

ただし、条約締結時の当事国の意図が用いられている語に発展可能な意味または内容を与えることであった場合には条約適用時にその用語が持っている意味が考慮される。条約で総称(generic term/termes de nature générique)が用いられている場合、条約が非常に長期間にわたって締結されまたは無期限である(存続期間の制限が無い)場合は、当事国はそれらの用語に発展可能な意味を持たせることを意図していたと推定される。

・「child」「enfant」「niño」「ребенка」「儿童」「طفل」という語が国際司法裁判所2009年7月13日判決が言うところの総称であるかははっきりしないが、選択議定書は存続期間が定められていないので、選択議定書で用いられている用語については当事国はそれらの用語に発展可能な意味を持たせることを意図していたと推定されると考えられるが、この推定は以下の理由により少なくとも部分的に覆されると考えられる。

・選択議定書のタイトル中にはprotocol/protocole/protocolo/протокол/议定书/بروتوكولという語が用いられているところ、選択議定書が採択された2000年5月25日以前に採択された条約のうちこれらの語がタイトルに用いられている条約には、

Protocol amending the Slavery Convention(奴隷条約改正議定書)
Optional Protocol to the International Covenant on Civil and Political Rights(人権B規約第一選択議定書)
Protocol relating to the Status of Refugees(難民の地位に関する議定書)
Second Optional Protocol to the International Covenant on Civil and Political Rights, aiming at the abolition of the death penalty(人権B規約第二選択議定書)
Montreal Protocol on Substances that Deplete the Ozone Layer(オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書)
Kyoto Protocol to the United Nations Framework Convention on Climate Change(気候変動枠組条約京都議定書)
Optional Protocol to the Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women(女子差別撤廃条約選択議定書)

などがある(注:他にもいろいろあります。なお、条約のタイトルについては上記では英語正文のタイトルのみ記載してありますが、リンク先で他の正文のタイトルが確認できます)。

・「奴隷条約改正議定書」は奴隷条約の一部を改正する条約であり、「人権B規約第一選択議定書」は同日に採択された人権B規約に基づき設置される委員会に個人通報に関する権限を追加的に認める条約であり、「人権B規約第二選択議定書」は人権B規約に新たな条項を追加する条約であり、「難民の地位に関する議定書」は実質的には難民の地位に関する条約の一部を改正する条約であり、「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」や「気候変動枠組条約京都議定書」は条約の目的や原則や一般的な義務等を定めたいわゆる枠組条約に関連してその目的を達成するための手段について具体的に定めた条約であり、「女子差別撤廃条約選択議定書」は女子差別撤廃条約により設置された委員会に個人または集団による通報に関する権限を新たに認める条約であるところ、

これらに共通するのは以前(同日含む)に採択された本体とでもいうべき条約ないしその内容を前提としてそれに密接に関連する内容を定めた条約であるということである。

・上記の事実に照らせば、一般的に、条約のタイトルとしてprotocol/protocole/protocolo/протокол/议定书/بروتوكولという語が用いられている場合には、その条約の当事国は以前に採択された本体とでもいうべき条約ないしその内容を前提としていたと推認されるべきであり、選択議定書についてはその当事国は過去に採択された児童の権利条約ないしその内容を前提としていたと推認されるべきである。

・そして、児童の権利条約1条は「child」「enfant」「niño」「ребенком」「儿童」「الطفل」という語について定義しており、選択議定書の当事国は選択議定書中で用いられている「child」「enfant」「niño」「ребенка」「儿童」「طفل」という語についてはこの定義を前提としていたと推認されるべきである。

(注。ロシア語の「ребенком」は単数造格、「ребенка」は単数生格または単数対格(選択議定書2条(c)のは生格)。アラビア語の「الطفل」は「طفل」に定冠詞が付いた形)

・この推認に関しては、選択議定書の準備作業、具体的には国連公式文書システムでSymbolのところに「E/CN.4/2000/75」と入力して検索すると出てくる文書の24段落の

「The representative of Japan explained that, with regard to the definition of child pornography, his delegation understood the term “representation” to mean visual representation.Moreover, for the purpose of the protocol the term “child” was understood as in the definition used in the Convention on the Rights of the Child.」

という記載及び同文書中で他国が異なる見解を述べていない点からも裏付けられる。

(準備作業から条約採択時の当事国の意図を探求することによりその後の発展を考慮した解釈を否定した事例としてヨーロッパ人権裁判所1986年12月18日判決(51~54段落)。結婚する権利に関するヨーロッパ人権条約12条に関して、準備作業から離婚する権利を含める意図はなかったなどとしてその後の発展を考慮した解釈を否定。)

・したがって、選択議定書の当事国の共通意図は「child」「enfant」「niño」「ребенка」「儿童」「طفل」という語については児童の権利条約1条が定義するところの「child」「enfant」「niño」「ребенком」「儿童」「الطفل」と同じ意味を持たせることであったと推認され、少なくとも、選択議定書の当事国が選択議定書中の「child」「enfant」「niño」「ребенка」「儿童」「طفل」という語について発展可能な意味を持たせることを意図していたとしても児童の権利条約1条が定義するころの「child」「enfant」「niño」「ребенком」「儿童」「الطفل」の意味の範囲内においてのみであったと推認される。

・また、文脈として児童の権利条約6条1項を考慮すると、児童の権利条約1条が定義するところの「child」「enfant」「niño」「ребенком」「儿童」「الطفل」には生命を有しないものは含まれないと解されることは一見して明らかであるから、選択議定書の当事国は児童の権利条約1条が定義するところの「child」「enfant」「niño」「ребенком」「儿童」「الطفل」には生命を有しないものは含まれないということを当然認識していたと推認され、

児童の権利条約1条が定義するところの「child」「enfant」「niño」「ребенком」「儿童」「الطفل」には生命を有しないものは含まれないということを当然の前提としたうえで選択議定書中の「child」「enfant」「niño」「ребенка」「儿童」「طفل」という語について児童の権利条約1条が定義するところの「child」「enfant」「niño」「ребенком」「儿童」「الطفل」と同じ意味を持たせることを意図していたと推認されるべきである。

(児童の権利条約1条が定義するところの「child」「enfant」「niño」「ребенком」「儿童」「الطفل」に生命を有しないものが含まれると仮定すると、児童の権利条約6条1項は生命を有しないものが生命に対する権利を有するという事実を当事国は認めるということになり明らかに不合理。)

・以上より、選択議定書の当事国は選択議定書中の「child」「enfant」「niño」「ребенка」「儿童」「طفل」という語について、児童の権利条約6条1項を文脈として考慮したうえでの児童の権利条約1条が定義するところの「child」「enfant」「niño」「ребенком」「儿童」「الطفل」の意味、具体的には"その児童に適用される法律の下でより早く成人年齢に達する場合を除いてそれぞれすべての18歳未満の人間(生命を有しないものは含まれない)"という発展可能な部分もあるが大部分において固定された意味を持たせることを意図していたと推認されるというべきである。

(上記でいう発展可能な部分とは、例えば"18歳"という部分については、その18歳という年齢に関しては固定された意味を持たせることを選択議定書の当事国は意図していたと推認されるが、その数え方に関して満年齢か数え年かといった点についてまで固定された意味を持たせることを当事国が意図していたとは推認されないので、年齢の数え方についてはその後の発展を考慮し得る。)

・そして、当事国が固定された意味を持たせることを意図していた部分については発展可能な意味を与えることを意図していたとは言えないから国際司法裁判所2009年7月13日判決がいうところの推定は覆るというべきであり、その部分については「通常の意味」は選択議定書の採択時におけるものというべきである。

・「通常の意味」の特定にあたっては、WTO上級委員会2005年4月7日報告(164段落)は通常の意味の特定のために用語の辞書的定義から始めてもよいとし、ヨーロッパ人権裁判所1978年11月28日判決(40段落)も辞書を用いたことがある。

・国際司法裁判所1999年12月13日判決(英語正文フランス語版。24~25段落)は同種の条約や他の文書を参照し、WTO上級委員会1998年10月12日報告(130段落)もさまざまな条約や決議を参照し、WTOパネル2012年7月16日報告(7.86~7.89)は会社のパンフレット、年次報告書、会社のウェブサイトのような業界のソースを参照すべきでないという理由もないとする。

・第1項。「child」の通常の意味。

・選択議定書の採択時における「child」の辞書的意味。

(略。選択議定書が採択された2000年5月25日にできるだけ近い時期に出版された英英辞典で「child」という語の意味を調べる必要がありますが、そういう英英辞典を探すのが大変です。規模の大きな公立図書館や外国語に関する学部のある大学の附属図書館に行けばいろいろありそうですが、残念ながら私の住んでいるところの近くにはそういう図書館がありません。)

・選択議定書の採択時に存在した同種の条約(特に選択議定書の前文で言及されている条約)における「child」の意味。

・1980年に採択された「Hague Convention on the Civil Aspects of International Child Abduction」(国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約)は「child」という語に関する定義規定を置いていないが、英語正文4条後段「The Convention shall cease to apply when the child attains the age of 16 years.」(childが16歳に達したときこの条約は適用されなくなるものとする)の規定から、実質的に同条約における「child」は16歳未満の者を意味する。

・1989年に採択された「Convention on the Rights of the Child」(児童の権利条約)の英語正文1条「For the purposes of the present Convention, a child means every human being below the age of eighteen years unless under the law applicable to the child, majority is attained earlier.」は、「child」について「every human being below the age of eighteen years unless under the law applicable to the child, majority is attained earlier」(その児童に適用される法の下でより早く成人年齢に達する場合を除いてそれぞれすべての18歳未満の人間)と定義する。さらに、前述したように同条約の英語正文6条1項を文脈として考慮すると「child」には生命を有しないものは含まれないと解される。

・1993年に採択された「Hague Convention on Protection of Children and Cooperation in Respect of Intercountry Adoption」(国家間にまたがる養子縁組に関する子の保護及び協力に関するハーグ条約)は「child」という語に関する定義規定を置いていないが、英語正文3条「The Convention ceases to apply if the agreements mentioned in Article 17, sub-paragraph c, have not been given before the child attains the age of eighteen years.」(childが18歳に達する前に第17条cの合意が与えられていなかったときはこの条約は適用されなくなる)との規定から、実質的に同条約における「child」は18歳に達する前に同条約の定める手続が第17条cの合意まで進んでいた場合を除いて18歳未満の者を意味する。

・1996年に採択された「Hague Convention on Jurisdiction, Applicable Law, Recognition, Enforcement and Cooperation in Respect of Parental Responsibility and Measures for the Protection of Children」(親等の責任及び子の保護措置に関する管轄権、準拠法、承認、執行及び協力に関するハーグ条約)は「child」という語に関する定義規定を置いていないが、英語正文2条「The Convention applies to children from the moment of their birth until they reach the age of 18 years.」(この条約は出生の瞬間から18歳に達するまでのchildrenに適用される)との規定から、実質的に同条約における「child」は18歳未満の者を意味する。

・1999年に採択された「International Labour Organization Convention No. 182 on the Prohibition and Immediate Action for the Elimination of the Worst Forms of Child Labour」最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する国際労働機関の条約(第百八十二号))の英語正文2条「For the purposes of this Convention, the term child shall apply to all persons under the age of 18.」は、同条約における「child」という語の定義と言えるかはさておき、「child」という語について「all persons under the age of 18」(18歳未満のすべての人間)を意味するものとして用いている。なお、児童労働に関して定める条約であるから、「child」は労働を行うための肉体を有する者であるということが当然の前提となっていることは明らかであり、肉体を有しないようなものは含まれないと解される。

・第2項。「enfant」の通常の意味。

・選択議定書の採択時における「enfant」の辞書的意味。

(略。やるべきことは基本的に「child」のところと同じ)

・選択議定書の採択時に存在した同種の条約(特に選択議定書の前文で言及されている条約)における「enfant」の意味。

・1980年に採択された「Convention de La Haye sur les aspects civils de l'enlèvement international d'enfants」(国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約)は「enfant」という語に関する定義規定を置いていないが、フランス語正文4条後段「L'application de la Convention cesse lorsque l'enfant parvient à l'âge de 16 ans.」(enfantが16歳に達する時この条約の適用は終わる)の規定から、実質的に同条約における「enfant」は16歳未満の者を意味する。

1989年に採択された「Convention relative aux droits de l'enfant」(児童の権利条約)のフランス語正文1条「Au sens de la présente Convention, un enfant s'entend de tout être humain âgé de moins de dix-huit ans, sauf si la majorité est atteinte plus tôt en vertu de la législation qui lui est applicable.」は「enfant」について「tout être humain âgé de moins de dix-huit ans, sauf si la majorité est atteinte plus tôt en vertu de la législation qui lui est applicable.」(その者に適用される法によりより早く成人年齢に達する場合を除いて18歳未満の人間)と定義する。さらに、同条約のフランス語正文6条1項を文脈として考慮すると「enfant」には生命を有しないものは含まれないと解される。

1993年に採択された「Convention de La Haye sur la protection des enfants et la coopération en matière d'adoption internationale」(国家間にまたがる養子縁組に関する子の保護及び協力に関するハーグ条約)は「enfant」という語に関する定義規定を置いていないが、フランス語正文3条「La Convention cesse de s'appliquer si les acceptations visées à l'article 17, lettre c), n'ont pas été données avant que l'enfant n'ait atteint l'âge de dix-huit ans.」から、実質的に同条約における「enfant」は18歳に達する前に同条約の定める手続が第17条cの合意まで進んでいた場合を除いて18歳未満の者を意味する。

1996年に採択された「Convention de La Haye concernant la compétence, la loi applicable, la reconnaissance, l'exécution et la coopération en matière de responsabilité parentale et de mesures de protection des enfants」(親等の責任及び子の保護措置に関する管轄権、準拠法、承認、執行及び協力に関するハーグ条約)は「enfant」という語に関する定義規定を置いていないが、フランス語正文2条「La Convention s'applique aux enfants à partir de leur naissance et jusqu'à ce qu'ils aient atteint l'âge de 18 ans.」から、実質的に同条約における「enfant」は18歳未満の者を意味する。

1999年に採択された「Convention no 182 de l'Organisation internationale du Travail concernant l'interdiction des pires formes de travail des enfants et l'action immédiate en vue de leur élimination」(最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する国際労働機関の条約(第百八十二号))のフランス語正文2条「Aux fins de la présente convention, le terme enfant s'applique à l'ensemble des personnes de moins de 18 ans.」は、同条約における「enfant」という語の定義と言えるかはさておき、「enfant」という語について「l'ensemble des personnes de moins de 18 ans」(18歳未満の人間全て)を意味するものとして用いている。なお、児童労働に関して定める条約であるから、「enfant」は労働を行うための肉体を有する者であるということが当然の前提となっていることは明らかであり、肉体を有しないようなものは含まれないと解される。

・第3項。「niño」の通常の意味。

(略。やるべきことは基本的に「child」のところと同じ)

・第4項。「ребенка」の通常の意味。

(略。やるべきことは基本的に「child」のところと同じ)

・第5項。「儿童」の通常の意味。

(略。やるべきことは基本的に「child」のところと同じ)

・第6項。「طفل」の通常の意味。

(略。やるべきことは基本的に「child」のところと同じ)

・第2節。ウィーン条約法条約31条1項「文脈」。

ヨーロッパ人権裁判所2015年10月15日判決(第146段落)は、(ヨーロッパ人権)条約及びその議定書が同じ語を用いているときは原則として同じ概念を指すと解されなければならないとする。

・その理由は特に示されていないが、ウィーン条約法条約31条1項もしくはそれに反映されている国際慣習法により客観的解釈が原則である条約において同じ語が用いられているときは当事国は同じ概念を指すことを意図していたからこそ同じ語を用いたのであろうと考えるのが自然であること及び議定書は本体とでもいうべき条約ないしその内容を当然の前提とする極めて密接な関連性のある文書であるということが理由と考えられ、その理はヨーロッパ人権条約及びその議定書においてのみ妥当するものではなく、条約及びその議定書一般に妥当すると考えられる。

・ 選択議定書3条1項(a)(ii)における「adoption of a child in violation of applicable international legal instruments on adoption」「l'adoption d'un enfant, en violation des instruments juridiques internationaux relatifs à l'adoption」「adopción de un niño en violación de los instrumentos jurídicos internacionales aplicables en materia de adopción」「усыновление ребенка в нарушение применимых международно-правовых актов, касающихся усыновления」「违反适用的有关收养的国际法律文书的方式收养儿童」「تبني طفل وذلك على النحو الذي يشكل خرقاً للصكوك القانونية الواجبة التطبيق بشأن التبني」という文言における「child」「enfant」「niño」「ребенка」「儿童」「طفل」は養子縁組の当事者となることができる者(つまり自然人)であることを当然の前提としているから、それと異なる意味であると解釈すべき根拠が無ければ選択議定書2条(c)における「child」「儿童」も養子縁組の当事者となることができる者(つまり自然人)であるということを前提として解釈すべきである。

・選択議定書10条1項及び3項における「child sex tourism」とはchildと性行為をするために(他国または他地域に)旅行することを意味するものであるから、ここでいう「child」は性行為を行う身体を有しているもの(つまり自然人)であるということが前提となっていることは明らかであるから、それと異なる意味であると解釈すべき根拠が無ければ選択議定書2条(c)における「child」も性行為を行う身体を有しているもの(つまり自然人)であるということを前提として解釈すべきである。

(注:この部分は中国語正文では「狎童旅游」)

・選択議定書11条における「rights of the child」という文言における「child」はさまざまな権利の主体であるということを前提としているから、それと異なる意味であると解釈すべき根拠が無ければ選択議定書2条(c)における「child」もさまざまな権利の主体であるということを前提として解釈すべきである。

・前文における「child's health or physical, mental, spiritual, moral or social development」という文言における「child」は発達する身体や精神等を有しているものであるということを前提としているから、それと異なる意味であると解釈すべき根拠が無ければ選択議定書2条(c)における「child」も発達する身体や精神等を有しているものであるということを前提として解釈すべきである。

・選択議定書の本体とでも言うべき児童の権利条約1条「For the purposes of the present Convention, a child means every human being below the age of eighteen years unless under the law applicable to the child, majority is attained earlier.」は「child」という語について「every human being below the age of eighteen years unless under the law applicable to the child, majority is attained earlier.」という意味を与えているから、それと異なる意味であると解釈すべき根拠が無ければ選択議定書2条(c)における「child」も「every human being below the age of eighteen years unless under the law applicable to the child, majority is attained earlier」という意味であると解釈すべきであり、また、児童の権利条約6条1項「States Parties recognize that every child has the inherent right to life.」における「child」は生命を有するものであるということが前提となっているから、それと異なる意味であると解釈すべき根拠が無ければ選択議定書2条(c)における「child」も生命を有するものであるということを前提として解釈すべきである。

(基本的に他の正文省略。追記予定)

第3節。ウィーン条約法条約31条1項「その趣旨及び目的」。

・選択議定書の前文中の「Considering that, in order further to achieve the purposes of the Convention on the Rights of the Child and the implementation of its provisions, especially articles 1, 11, 21, 32, 33, 34, 35 and 36, it would be appropriate to extend the measures that States Parties should undertake in order to guarantee the protection of the child from the sale of children, child prostitution and child pornography,」(他の正文省略)によれば、

選択議定書の趣旨及び目的は、児童の権利条約の目的及びその規定(特に1条、11条、21条、32条、33条、34条、35条及び36条)の実施をさらに達成することである。

・上記の目的に関し、児童の売買、児童買春及び児童ポルノからの児童の保護を保障するために締約国がとるべき措置を拡大することが適当であろうという部分も考慮すると、選択議定書は児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関して締約国がとるべき措置を児童の権利条約よりも拡大することを目的としていると解することは可能であるかもしれない。

しかし、選択議定書と児童の権利条約を比べてみると、例えば選択議定書2条(c)は児童の権利条約34条(c)をもとにするものであることは明らかであるところ、

選択議定書2条(c)は児童の権利条約34条(c)において用いられている「children」「enfants」「niño」「детей」「儿童」「للأطفال」という語を複数形か単数形かという点を除いて変更せずにそのまま用いていることから、選択議定書2条(c)における「child」「enfant」「niño」「ребенка」「儿童」「طفل」という語の意味の範囲については児童の権利条約34条(c)において用いられている「children」「enfants」「niño」「детей」「儿童」「للأطفال」という語の意味の範囲よりも拡大することを目的としていたとは解されないし(むしろ変更しないことを意図していたと言える)、

(注。アラビア語の「للأطفال」は「طفل」の複数形に定冠詞と前置詞が付いた形)

選択議定書2条(c)の「child」「enfant」「niño」「ребенка」「儿童」「طفل」以外の部分に関しても、選択議定書2条(c)は「pornographic (中略) materials」という不明確な概念が用いられている児童の権利条約34条(c)を明確化したものであり「pornographic (中略) materials」の範囲を拡大したものとは言えないから、

選択議定書2条(c)は締約国がとるべき措置を児童の権利条約よりも拡大することを目的としていたとは言えず、児童の権利条約の規定(この場合は34条(c))の実施をさらに達成することを目的として不明確な概念を明確化したに過ぎないと考えられる。

したがって、選択議定書は児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関して締約国がとるべき措置を児童の権利条約よりも拡大することを目的としていると解することが可能であったとしても、ありとあらゆる点において締約国がとるべき措置を児童の権利条約よりも拡大することを目的としていたとは言えないのであり、

選択議定書の個々の部分ごとに、締約国がとるべき措置を児童の権利条約よりも拡大することを目的としたものであるかまたは児童の権利条約の規定の実施をさらに達成することを目的として不明確な概念を明確化したに過ぎないか等を検討しなければならない。

・第4節。ウィーン条約法条約31条3項「文脈とともに、次のものを考慮」。

・第1項。ウィーン条約法条約31条3項(a)「条約の解釈又は適用につき当事国の間で後にされた合意」。

・国際司法裁判所2014年3月31日判決(英語正文フランス語版外務省訳。83段落)は、国際捕鯨取締条約の解釈に際して、条約の全当事国の支持なしに採択されたIWC決議はウィーン条約法条約31条3項(a)の条約の解釈に関する後にされた合意とは言えないとする。

・同判決に照らせば、ウィーン条約法条約31条3項(a)の「合意」は全当事国によるものでなければならないことは明らかである。そして、選択議定書2条(c)に関しては、その解釈に関する全当事国による「合意」は存在しない。

・第2項。ウィーン条約法条約31条3項(b)「条約の適用につき後に生じた慣行であつて、条約の解釈についての当事国の合意を確立するもの」。

・国際司法裁判所2014年3月31日判決(英語正文フランス語版外務省訳。83段落)は、条約の全当事国の支持なしに採択されたIWC決議はウィーン条約法条約31条3項(b)の条約の解釈についての当事国の合意を確立する後に生じた慣行とは言えないとする。

・同判決に照らせば、ウィーン条約法条約31条3項(b)の「慣行」は全当事国によるものでなければならないことは明らかである。そして、選択議定書2条(c)に関しては、その解釈または適用に関する全当事国による「慣行」は存在しない。

・第3項。ウィーン条約法条約31条3項(c)「当事国の間の関係において適用される国際法の関連規則」。

WTOパネル2006年9月29日報告(7.68以下。特に7.70。脚注243も重要)は、ウィーン条約法条約31条3項(c)は解釈されている条約の全当事国間の間の関係で適用される国際法の規則の考慮を求めていると解釈している。

・そして、選択議定書の全当事国が当事国となっている他の条約は存在しない。

(注:選択議定書の当事国のうちアメリカは児童の権利条約の当事国ではない)

・第4節。ウィーン条約法条約32条「解釈の補足的な手段」。

・「条約の準備作業及び条約の締結の際の事情」は例示。

WTO上級委員会1998年6月5日報告(84段落・93段落)が明言するように、条約解釈の目的は条約の当事国の共通意思を確認することであると理解されていることや、

ウィーン条約法条約31~33条は常設国際司法裁判所や国際司法裁判所が条約を解釈する際に採用していたルールを明文化したという面が強いこと及び常設国際司法裁判所1925年11月21日勧告的意見(24頁)が、条約締結後の事実は締結時の当事国の意思に光を当てる(→当事国の意思を明らかにする)ような性質のものである場合しか裁判所は考慮しないという趣旨を判示していたことに照らせば、

「条約の準備作業及び条約の締結の際の事情」は条約締結時の当事国の共通意思を明らかにすることができる可能性があるがゆえに条約解釈に際して一定の場合に依拠することが出来ると考えるのが自然であり、

「条約の準備作業及び条約の締結の際の事情」と同様に条約締結時の当事国の共通意思を明らかにすることができる可能性があるものについては解釈の補足的な手段に該当しうるとしても、条約締結時の当事国の共通意思を明らかにすることができる可能性があるもの以外については解釈の補足的な手段には該当しないというべきである。

(注:選択議定書の解釈に関する児童の権利委員会の見解は、法的拘束力がないのはもちろん、条約締結時の当事国の意図を明らかにすることができるような性質のものでもないため解釈の補足的手段にすら該当しないと考えられるということ。)

・「条約の準備作業」に該当するものは、選択議定書2条(c)の「child」「enfant」「niño」「ребенка」「儿童」「طفل」に関しては、前述した「E/CN.4/2000/75」(24段落)。

・第5節。ウィーン条約法条約33条3項「条約の用語は、各正文において同一の意味を有すると推定される。」

(略。ウィーン条約法条約33条3項は、複数の正文が存在する条約の解釈に際し、ある正文ではAという意味もBという意味もあるが別の正文ではAという意味しかないという場合には、反証が無ければ全ての正文に共通するAという意味であると解釈するというルール。

有名な例としては、英語の前置詞「on」には時間的な意味や関係的な意味(日本語訳するなら「~に際し」と「~に関し」)があるがフランス語の前置詞「à」とスペイン語の前置詞「a」には時間的な意味しかないことから時間的な意味であると解釈したWTOパネル2008年7月18日報告(7.156以下)など。

この規定があるため、例えば選択議定書2条(c)の英語正文で用いられている「child」にはAという意味もあるということを示しても、他の正文で用いられている「enfant」「niño」「ребенка」「儿童」「طفل」にも同じAという意味があるということを示せなければ、選択議定書2条(c)の「child」「enfant」「niño」「ребенка」「儿童」「طفل」はAという意味であるという解釈はできないことになります。)

・第6節。結論。

(略。流れとしては辞書等で用語の意味を調べる→全ての正文が共通して有する意味以外はウィーン条約法条約33条3項によりとりあえず除外→2つ以上の可能性が残っているときは文脈や条約の趣旨及び目的に照らして最も妥当なものを選択。)

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正文に関する参考情報(PDFではなくTXT形式で見たい場合)

児童の権利条約
http://www.ohchr.org/en/professionalinterest/pages/crc.aspx
http://www.ohchr.org/fr/professionalinterest/pages/crc.aspx
http://www.ohchr.org/SP/ProfessionalInterest/Pages/CRC.aspx
http://www.un.org/ru/documents/decl_conv/conventions/childcon.shtml
https://www.un.org/zh/documents/treaty/files/A-RES-44-25.shtml
http://www.ohchr.org/AR/ProfessionalInterest/Pages/CRC.aspx
https://www.arij.org/files/arijadmin/international_conventions/conventionenfants.pdf#search=%27%D8%A7%D8%AA%D9%81%D8%A7%D9%82%D9%8A%D8%A9+%D8%AD%D9%82%D9%88%D9%82+%D8%A7%D9%84%D8%B7%D9%81%D9%84%27

選択議定書
http://www.ohchr.org/EN/ProfessionalInterest/Pages/OPSCCRC.aspx(英語)
http://www.ohchr.org/FR/ProfessionalInterest/Pages/OPSCCRC.aspx(フランス語)
http://www.ohchr.org/SP/ProfessionalInterest/Pages/OPSCCRC.aspx(スペイン語)
http://www.un.org/ru/documents/decl_conv/conventions/rightschild_protocol2.shtml(ロシア語)
https://zh.wikisource.org/wiki/%E5%85%B3%E4%BA%8E%E4%B9%B0%E5%8D%96%E5%84%BF%E7%AB%A5%E3%80%81%E5%84%BF%E7%AB%A5%E5%8D%96%E6%B7%AB%E5%92%8C%E5%84%BF%E7%AB%A5%E8%89%B2%E6%83%85%E5%88%B6%E5%93%81%E9%97%AE%E9%A2%98%E7%9A%84%E4%BB%BB%E6%8B%A9%E8%AE%AE%E5%AE%9A%E4%B9%A6(中国語)
http://www.ohchr.org/AR/ProfessionalInterest/Pages/OPSCCRC.aspx(アラビア語)

アメリカ合衆国法典18編2257条などに関する資料&雑記。

2ヶ月ほど前、アメリカ合衆国法典18編2257条及び2257A条に基づく年齢確認等がちょっと話題になっていたみたいですが、児童ポルノに関連する外国法や条約などに関する論文(研究ノートなど含む)や調査報告書と称するものやツイートなどは明らかに情報不足だったりあまりにも不正確だったりすることが非常に多く、やはり自分で法律の条文などを確認したいという人もいると思いますので、条文や重要な判例などにリンクを張っておきます。

アメリカ合衆国法典18編2257条(実際の性的にあからさまな行為に関するもの)
アメリカ合衆国法典18編2257A条(擬似の性的にあからさまな行為に関するもの)
連邦規則集28編75部(上記2つに関する規則)
アメリカ合衆国法典18編2256条(定義規定)

第3巡回区控訴裁判所2016年6月8日判決(法律及び規則75.5条によって認められる令状なしでの捜索は修正4条違反。修正1条との関係で法律が厳格審査基準を通過するよう狭く作られているどうかを検討するために連邦地裁に差戻し。なお、再審理前の判決は第3巡回区控訴裁判所2015年5月14日判決

(追記。ペンシルベニア州東部地区連邦地裁2018年8月3日判決(2257条及び2257A条並びに規則のうち二次制作者に関する部分全部と一次制作者に関する部分の大部分は違憲))

コロンビア特別区連邦地裁1989年5月16日判決(制作者の範囲が現在よりもかなり広かったうえに現在なら二次制作者に該当する者も演技者に接触して年齢確認等を行わなければならないとされていたこと等が過度に負担であるとともに政府の利益に合うよう狭く作られておらず修正1条違反(後にこの判決に沿って法改正)。刑事裁判においてある人が記録の作成保管に関する規定の遵守を怠ったことが証明されたときは演技者が未成年だったと推定される旨の規定や視覚的描写物に記録保管場所を添付しなかったときは当該表現物の全演技者が未成年だったと推定される旨の規定はデュープロセス条項違反(連邦なので修正5条。後に推定規定を削除し違反に刑事罰を科すよう法改正)。映画の中の性的な場面中の傍観者が年齢確認等の対象となる「every performer portrayed in a visual depiction of actual sexually explicit conduct」に含まれるかどうかはっきりしないと指摘。注1。なお、1988年当時の2257条

コロンビア特別区巡回区控訴裁判所1994年9月20日判決(an illustrated sex manual for the elderlyに対する年齢確認制度の適用は違憲と示唆。注2。"制作者がビジネスを続けている限り及びその後5年"とされていた記録保管期間について"制作者がビジネスを続けている限り"の部分を無効としより合理的な規定に置き換えられるまで公訴時効等を考慮して5年に制限(後に法改正)。フィルム加工などをしてその製作物を雇った制作者に返す者に法は適用されないと解釈(後に二次制作者に含まれない者を定める規則改正)。視覚的描写物に添付される陳述の正確性は出版等の時点における正確性が要求されると解釈。演技者の本名以外の名称の記録義務は制作者の要求に応じて演技者が提供した名称を記録するだけの義務と解釈。法は成人モデルのプライバシーを侵害するとともに本名や変名や住所の暴露は成人モデルが嫌がらせ等を受けさせられることになり得るので保護された表現に従事することを思いとどまらせるため過度に負担であるという原審・コロンビア特別区連邦地裁1992年5月26日判決の主張について法律及び規則は司法長官及びその被委任者と制作者以外に開示することを要求していないし演技者が制作者から嫌がらせ等を受けることは懸念されないとして否定。注3)

コロラド地区連邦地裁2007年3月30日判決。federal supplement. Second seriesの483巻1069頁以下に掲載されている模様。調査中。

第6巡回区控訴裁判所2009年2月20日判決(匿名で表現する自由の問題及び頒布することなく家庭で私的な楽しみのために自分たち自身の行為を描写した画像を制作した成人カップルに法は適用されるかという問題。後者に関連して2008年の規則改正時の司法省のコメント。判決をテキスト形式で読みたい人向けにfindlaw。なお、原判決は第6巡回区控訴裁判所2007年10月23日判決

注1:年齢確認等の対象となる2257条(b)の「every performer portrayed in a visual depiction of actual sexually explicit conduct」及び2257A条(b)の「every performer portrayed in a visual depiction of simulated sexually explicit conduct」は、現在の2257条(h)(3)「the term “performer” includes any person portrayed in a visual depiction engaging in, or assisting another person to engage in, sexually explicit conduct.」及び2257A条(g)とあわせて読んでも、性的にあからさまな行為の視覚的描写中で描写されている性的にあからさまな行為に従事しているまたは従事している他者を手助けしている人間が含まれることがわかるだけで、1989年判決が判示するように性的にあからさまな行為の視覚的描写中のそれら以外の者(性的にあからさまな行為の傍観者など)が含まれるか否かははっきりせず、この点に関する解釈を明示する判例等はネット上では見あたらない(私が見落としているだけかもしれませんが)。ただ、assistに傍観する行為を含むというのは文言上かなり無理気味だと思う。

なお、性的にあからさまな行為の視覚的描写を含む映画等の中で描写されているが性的にあからさまな行為の視覚的描写中には描写されていない出演者(要するに性的にあからさまな行為が描写されている場面以外の場面にのみ出演している者)については文言上「every performer portrayed in a visual depiction of actual sexually explicit conduct」もしくは「every performer portrayed in a visual depiction of simulated sexually explicit conduct」に含まれるとは思えないし、仮に含まれるとした場合、そのような出演者の年齢確認等を行っても18歳未満の者が性的にあからさまな行為に従事させられまたは従事している他者を手助けさせられること及びそのような行為をしている18歳未満の者を視覚的に描写したビデオ等が製造販売等されることを防ぐという利益を実質的に促進するとは考えられないので、審査基準として厳格審査基準を採用した場合はもちろん中間審査基準を採用した場合であっても個人的には違憲だと思う。

注2:コロンビア特別区巡回区控訴裁判所1994年9月20日判決第6巡回区控訴裁判所2009年2月20日判決第3巡回区控訴裁判所2015年5月14日判決は、明らかに18歳未満でない成熟した成人モデルのみを描写したものに年齢確認制度が適用されるのは違憲ということを示唆する。

注3:演技者の住所などの情報に関して、現行の規則75.2条(b)は二次制作者が一次制作者から受け取る記録のコピーについて住所などの情報を編集して除去してよいということを明示している。

一次制作者が保管すべき演技者の身分証明書のコピーについては住所などの情報を編集して除去してよいということを明示する規定は見あたらないものの(規則75.2条(b)により一次制作者も住所などの情報を除去してよいかははっきりせず、文脈的には微妙)、司法省HPにある手引書によれば除去可能な模様。

雑記:20年以上昔の事案ですが日本でも東京高裁平成2年3月28日判決・高刑集 43巻1号17頁(上告審はおそらく最高裁平成5年10月26日判決・刑集47巻8号81頁)のように不十分な年齢確認しか行わず18歳未満の者に全裸で露骨な性戯や模擬性交などをさせたビデオが製造されたという事件が過去に存在し、こういう事件はもっとしっかりした年齢確認が行われていれば防げたはずであり、したがって、一定の性的行為(性交・性交類似行為とか他人の性器等を触る行為とか衣服の全部又は一部を着けずに殊更に性的な部位を露出又は強調する行為とか。以下、基本的に同じ)を行う人間の姿態を視覚的に描写したビデオや写真の制作者に対し、一定の性的行為を行う人間についてしっかりした年齢確認を法律で義務付けるというのは検討に値すると思いますし、その際に外国の制度を参考にするというのは一理あると思います。

ただ、外国の制度を参考にするというのは、外国の制度を日本の法律に合うように技術的な置き換え(例えば、18歳未満の者のどのような姿態を視覚的に描写したものが「child pornography」「児童ポルノ」に該当するかはアメリカ合衆国法典18編2256条児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項では異なるためそういう部分は日本の法律に合うように置き換える必要があります。)をしたうえで日本の法律として持ち込むということではありません。

まず、そもそも、合衆国法典第18編2257条及び2257A条については、そういう技術的な置き換えをしても日本の法律として持ち込むことが不可能な部分があります。例えば、制作者が保管している年齢確認記録について令状なしでの検査を認める規定は上述のようにアメリカでも修正4条違反という第3巡回区控訴裁判所の判例があるわけですが、日本では、その性質上、年齢確認記録の作成保管義務違反という犯罪の刑事責任追及のための証拠の取得収集そのものである年齢確認記録の検査を令状なしで行うことができるとする規定は明らかに憲法35条違反ですので日本の法律として持ち込むことは不可能です。

また、アメリカの社会的事情に照らせば必要と考えられている部分であっても日本の社会的事情に照らせば必要とは考えにくい部分があり得ます。例えば、アメリカでは制作者が記録すべき事項のうち演技者の本名及び変名に関しては上述のコロンビア特別区巡回区控訴裁判所1994年9月20日判決は「We find this appropriate to the protection of children because it enables enforcement officials to detect forged documentation. To illustrate, if it is determined that a particular woman had been pictured using aliases in 1990 and 1991 and using her own name in 1992, and if the documents in the records indicate an age of 18 on each occasion, it may be inferred that at least two of them are forged and that she was likely to be underage on the first two occasions. The cross-referencing of the records allows enforcement officials to locate the documents for comparison.」と判示しており、要するに演技者の本名及び変名を制作者が記録して保管することは捜査官が偽造文書を検出することを可能にするということのようで、個人的にはあまり説得力のある理由とは思えませんが、それはいったんおいておいて、

日本では、例えば、正しく発行された日本の旅券(パスポート)については発給申請書を画像化したものを外務省が保存していますので、旅券番号(及び発行年月日など)をもとに外務省に照会すれば年齢確認に用いた旅券が本物か偽造かはわかるはずですので、少なくとも日本の旅券で演技者の年齢確認をした場合には旅券番号(及び発行年月日など)を記録して保管すれば演技者の本名(及び変名)に関する情報については記録して保管する必要はないと思います。

逆に、アメリカでは採用されていないが日本の社会的事情に照らせば必要と考えられるので追加的に採用すべき規制というのもあり得るかもしれません。ただ、そのような追加的な規制を採用すべきであると主張するならば、

例えば、①アメリカでは年齢確認の対象となる者について上述のように性的にあからさまな行為の傍観者などは含まれるか否かはっきりせず文言的には含まれないように思われるところ日本では一定の性的行為の傍観者についても含めるべきであると主張したり、②アメリカでは上述のように演技者の住所については制作者が保管すべき顔写真付き身分証明書のコピーから除去してよいことになっているところ日本では演技者の住所についても記録して保管すべきであると主張したり、③アメリカでは視覚的描写物の制作に関与せず流通にのみ関与する販売業者は演技者の年齢確認義務やその記録の保管義務等を負っていないところ日本では各販売業者についても記録保管義務を負わせるべきであると主張したりするならば、

少なくとも日本の社会的事情に照らせばそのような追加的な規制を採用すべきであるという理由を、例えば上記①の例であれば、契約関係その他により支配下にある18歳未満の者に他者の一定の性的行為を傍観させてそれを撮影した場合は児童ポルノ犯罪にはならないとしても(いわゆるビニール本の販売店で店員としてその販売に従事させることに関する最高裁昭和59年11月30日判決・刑集38巻11号2989頁と比較すれば)児童福祉法34条1項九号に触れると考えられるため一定の性的行為の傍観者についても年齢確認の対象とすべきである、などといったように明示すべきだと思います。

なお、念のため付け加えますが、上記②の例については演技者の住所は演技者の年齢確認に役立つ情報ではありませんので演技者の住所についても記録して保管すべきであるという主張は明らかに不合理だと思いますし、上記③の例については各販売業者に演技者の年齢確認記録を持たせたところで各販売業者がその販売する写真集やビデオなどの視覚的描写物の内容を確認しさらに年齢確認記録の演技者の顔写真と当該視覚的描写物における演技者を見比べて同一人物であること及びその生年月日を確認するということをいちいち行うとは現実的にはとても考えられず、一定の性的行為を行っている18歳未満の者を視覚的に描写したビデオや写真などの拡散を防ぐという利益を実質的に促進するとは考えられない一方で、たとえ各販売業者が保管すべき年齢確認記録の内容が演技者の顔写真及び生年月日のみであったとしても演技者の個人情報が強制的に開示されることとなる人的範囲が一ないし少数の制作者からおそらく数十~数千の販売業者にまで拡大するという演技者の不利益は小さくなく、また、年齢確認記録を制作者から受け取って一定期間保管しなければならなくなる各販売業者の負担や年齢確認記録の写しを作成して各販売業者に送付することとなる制作者の負担は決して小さくないですので、各販売業者にも演技者の年齢確認記録の保管義務を負わせるべきであるという主張は妥当であるとはとても言えないと思います。

アメリカの制度の場合、役者との契約からその演技の撮影・編集・出来上がった視覚的描写物の複製まで1者で行えば年齢確認及びその記録の作成保管をする者はその制作者1者のみになるわけですが、年齢確認及びその記録の保管を行う者が1者のみだと杜撰な年齢確認が行われても発覚しにくく、また、年齢確認記録が紛失・滅失する危険性もあるので最低でも制作者のほかにもう1者によって年齢確認及び記録の保管を行うべきであるという主張であれば強ち不合理でもないと思いますが、制作者から受け取った年齢確認記録の写しをもとに年齢確認及びその記録の保管を行う審査団体を設けてそこで年齢確認及び記録の保管を行うとした方が各販売業者に年齢確認記録を保管させるよりも演技者の不利益や制作者の負担は小さいはずですので、各販売業者にも年齢確認記録を保管させるべきであるという主張を妥当なものであるとするものではないと思います。

余談ですが、コロンビア特別区連邦地裁1989年5月16日判決コロンビア特別区連邦地裁1992年5月26日判決などは「過度に負担」(overly burdensome)という理由で当時の2257条について修正1条違反と判断していますので、それに関連して少し。

アメリカでは、憲法上保障されている基本的権利について法律で直接的に制限することが難しいと判断される場合に当該基本的権利の行使に関与する者に過度な負担を課すことで当該基本的権利の行使を間接的だが実質的に妨げる目的でまたはそのような効果を有する法律が制定されることがあり、例えばロー判決以来の連邦最高裁判例によって(審査基準については厳格審査基準から不当な負担(undue burden)の基準に変わったものの)憲法上保障されている基本的権利とされている妊娠女性の中絶の自由について妊娠女性の生命身体の保護を名目として中絶手術を行う医師ないし医療機関は相当高度な設備を設けていなければならないなどといった要件を満たすことを要求することによって中絶手術を行うことができる医師ないし医療機関を事実上減らすことによって間接的だが実質的に妊娠女性の中絶の自由の行使を困難にする法律が制定されたりします(アメリカ連邦最高裁2016年6月27日判決など参照)。

そして、アメリカでは性的にあからさまな行為に従事している成人を視覚的に描写したビデオ等はミラー判決が定義するところのわいせつ物に該当しない限り未成年者に見える成人を視覚的に描写したビデオ等であっても修正1条によって保護されていると考えられているわけですが(アシュクロフト判決参照。なお、合衆国法典法典18編2256条(8)(B)については合衆国法典2252A条(特に(c)(1))とあわせて読めば実質的には未成年者であるか否かに関する立証責任について被告人側に一定程度負担させるものであることは明らかですが(それが憲法違反かどうかについてアシュクロフト判決は判断回避)、どういうわけか2256条(8)(B)についてだけ言及し2252A条(c)(1)について言及しない論文等がたまにありますので注意が必要です)、

2257条及び2257A条の年齢確認制度は演技者に本名等を一次制作者及び二次制作者に開示させたり司法長官及びその被委任者が年齢確認記録を検査することで演技者の本名等を容易に知ることができるようにしたりすることによって性的にあからさまな行為に従事することを役者にためらわせることで性的にあからさまな行為に従事している成人を視覚的に描写したビデオ等の制作を難しくしたり、制作者に年齢確認記録を保管させたり司法長官及びその被委任者の検査に応じられる体制を整えさせたりすることによって人的・経済的に小さくない負担をかけることで性的にあからさまな行為に従事している成人を視覚的に描写したビデオ等を制作することをためらわせる効果を少なからず有しています。

一定の性的行為を行っている18歳未満の者を視覚的に描写したビデオ等の製造販売等を防ぐという利益が極めて重要なものであることは論じるまでもありませんし、そのために一定の性的行為を行っている人間を視覚的に描写したビデオ等の制作者に多少の負担を負わせたり演技者の個人情報を開示させられない利益に少し犠牲になってもらったりするという判断はあり得るものだと思いますが、一定の性的行為を行っている18歳未満の者を視覚的に描写したビデオ等の製造販売等を防ぐという利益のために必要な範囲を超えて制作者や演技者に過度な負担を負わせることで児童ポルノでもわいせつ物でもない視覚的描写物の製造販売等を実質的に妨げることを意図してまたはそのような効果を有する法律を制定するようなことはあってはならない、ということは頭の片隅に入れておくべきだと思います。

(さらに話がそれますが、憲法上または条約上保護されている人権Aを保護するために憲法上または条約上保護されている別の人権Bを制限するという手段を検討する場合、人権Aだけでなく人権Bもまた保護されている人権である以上その制限は最小限であるべきであって、(人権Bの制限が憲法上または条約上許されるか否かの審査基準として司法がどのような基準を採用しているかに関わらず)採用しようとする人権Bの制限という手段によって人権Aの保護という目的が実質的に促進されるか否かを検討するだけでなく(採用しようとする手段の全部または一部が人権Aの保護という目的を実質的に促進しないならその全部または一部は手段として不適切)、人権Aを同程度に保護することができる手段が複数あるならばその中で人権Bの制限が最小となるものを選択すべきであり(いわゆるLRA)、また、人権Bの制限によって失われる利益の重さよりも人権Bの制限によって得られる利益の重さが上回るか否か(比較衡量または比例原則)なども立法者は検討すべきだと思います。)

雑記(メモ)。

いわゆるCG児童ポルノ事件。

http://www.asahi.com/articles/ASJ3H4WGGJ3HUTIL02K.htmlhttp://www.yomiuri.co.jp/national/20160315-OYT1T50160.htmlhttp://www.jiji.com/jc/zc?k=201603/2016031500821等々によると、34点のうち3点が児童ポルノと認定され有罪(31点は児童ポルノと認定されず)。

判決全文が公開されていないので詳しいことはまったくわからないけれど、上記の記事などを読んだ感じでは、「児童」については実在を要するけれど、その「姿態」については当該児童が実際にその姿勢をとったことがある必要はなく「姿態」の細部についても当該児童のものと完全に同一である必要もないという感じなのかなぁという印象。

追記。

http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20160315#1458048734
http://danblog.cocolog-nifty.com/index/2016/03/post-d45a.html
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20160316#1458127459

メモ(改訂1)。

韓国憲法裁判所2015年6月25日決定(韓国憲法裁判所HP)

・韓国語は読めないので現時点では基本的にGoogle翻訳頼り。

・「児童・青少年の性保護に関する法律」旧8条2項(営利目的配布等。現在は11条2項)及び旧8条4項(配布・公然展示等。現在は11条3項)における児童・青少年利用淫乱物(=児童ポルノ。定義は「児童・青少年として」と「認識することができる人や表現物」の間に「明らかに」を追加する改正の前の旧2条5号)のうち、「児童・青少年として認識することができる人や表現物が登場してその他の性的行為をする内容を表現すること」の部分は韓国憲法に違反しない、という決定(合憲5:違憲4)。

(1)明確性の原則に関連する部分

・「"児童・青少年として認識することができる"とは、性的行為の主体や対象者または表現物が児童や青少年として認識されるのに十分な程度のものであることを知ることができる。」

・「"児童・青少年として認識することができる人"は、単に登場する人が若く見えまたは大人が児童・青少年のように服を着たり扮装したりした程度にとどまるのではなく、通常の常識を持った一般人の立場から、全体として、その外見、身元、登場人物間の関係、その人を登場させて各種の性的行為を表現した画像や映像など媒体物の制作動機と経緯などを総合して見たときに、実際の児童・青少年と誤認するのに十分な程度の人が登場する場合を意味すると見なければならない。」

・決定文中でも触れられている大法院2014年9月24日判決大法院2014年9月26日判決(及び大法院2014年9月25日判決)と比べてみると、用いられている文言に多少違いはあるものの本質的に大きな差はない。

・「"児童・青少年として認識することができる表現物"とは、"表現物"の描写程度や外観だけをもって判断するのではなく、全体として、これらの表現物を登場させて各種の性的行為を表現した画像や映像など媒体物の制作動機と経緯、表現された性行為のレベル、登場人物間の関係、全体的な背景やストーリー、淫乱性などを総合して判断しなければならない。」

・「これらの表現物を利用して、審判対象条項で定めた性的行為を表した児童・青少年利用淫乱物が児童・青少年を対象にした異常性欲を起こすのに十分な行為を含んでいて児童・青少年を対象にした性犯罪を誘発するおそれがあるレベルのものに限られると見るならば、裁判官の??や??に伴う補充的な解釈によって判断基準が具体化されて解決されることができるので、単に「表現物」の部分の文言の意味の広汎性や抽象性だけをもって処罰される行為を予測することができないとして明確性の原則に違反すると見ることはできない。」

・児童・青少年を対象にした異常性欲を起こすのに十分な行為を含んでいて、児童・青少年を対象にした性犯罪を誘発するおそれがあるレベルのもの、はいくらでも広く解釈することも狭く解釈することも可能で、基準を示していないに等しい。

(3)過剰禁止の原則(比例原則)に関連する部分

・この決定理由だと、法定刑の上限だけが決まっている旧8条2項及び旧8条4項とは異なり法定刑の下限が決まっている旧8条1項(製造・輸入・輸出。5年以上の懲役。現在は11条1項で無期または5年以上の懲役)については평등원칙(平等原則)との関係で異なる判断が出る可能性も。
 
・続く。

改正東京都青少年健全育成条例の解釈論と「妹ぱらだいす2」に関するメモ。

http://www.metro.tokyo.jp/INET/KONDAN/2014/05/40o5d100.htm
http://mainichi.jp/select/news/20140513k0000m040107000c.html
http://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20140512/4390261.html
http://sankei.jp.msn.com/life/news/140512/trd14051220430020-n1.htm

新基準(今回は東京都青少年健全育成条例8条1項二号、同施行規則15条2項二号)により5月16日付で不健全図書に指定された「妹ぱらだいす!2 ~お兄ちゃんと5人の妹のも~っと!エッチしまくりな毎日~」という作品は読んだことがないので個別的なことは現時点では完全には書けないけれど、資料が多少出てきているので思ったこと等をメモ。

(1)描写内容等。

現物を入手してからでないと完全にはわからないものの、http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/09_singi/647/647betten1.pdfによると、「兄と実妹」及び「兄と異母妹」間の性交及び性交類似行為(以下、あわせて「性交等」)の描写があるらしい。
 
資料中の「実妹」「異母妹」という文言の使い分けは疑問だけど(普通「実妹」といえば血縁関係のある妹のことで異母妹も含まれる)、「実妹」が「異母妹」とは別の概念として使われていることから「実妹」に関しては少なくとも同母のはず。http://www.asahi.com/articles/ASG5Q7VY1G5QUCVL01N.htmlによると、家族構成は父親1人、母親5人、兄と妹のうちの1人は同母兄妹、他は異母兄妹。
 
性交の描写は少なくとも2回、おそらく性交類似行為の描写の方が多い。

(2)民法734条。

生物学的に同母兄妹である「兄」及び「実妹」については民法734条によって婚姻が禁止される近親者(2親等の傍系血族)にあたるとみられる。

一方、生物学的に異母兄妹である「兄」及び「異母妹」については、この時点では民法734条によって婚姻が禁止される近親者(2親等の傍系血族)かどうかははっきりしない。「兄」または「異母妹」の少なくとも一方について、出生以前に両親が婚姻したことがなくもしくは婚姻したことがあっても婚姻解消から出生まで300日を超えていて、かつ、生物学的な父から認知されていなければ、「兄」「異母妹」は法律上は父を共通としないので2親等の傍系血族ではない。
 この場合については非公式見解ながら近親相姦類型の規制対象外であることが示されている(http://www.asahi.com/showbiz/column/animagedon/TKY201108280112.html)。

(現物が入手できたら続く)

(3の1)条例8条1項二号中の「強姦等の著しく社会規範に反する性交又は性交類似行為」の意義。

「強姦等の著しく社会規範に反する性交又は性交類似行為」に関して問題となるのは「社会規範」の意義。通常、社会規範というときには法規範のほか道徳規範なども含まれる。このうち、法規範については条例8条1項二号中の「社会規範」に含まれることは問題ないとして、道徳規範については条例8条1項二号中の「社会規範」に含めてよいかは検討を要する。

法規範については「社会規範」に含まれることは問題ないとしても、具体的事例において条例8条1項二号の適用が問題となるときにいかなる法規範が存在しているかは検討されなければならない。「~してはならない」旨を表明している法律や条例が存在していたとしても、それだけでは「~してはならない」旨の法規範が存在しているとはいえない。
 法律や条例よりも上位であり様々な自由を保障している日本国憲法または人権B規約と抵触しているときはその法律や条例は無効であって、「~してはならない」旨の法規範は存在しないことになり、むしろ私生活上の自由を保障している日本国憲法13条(最高裁昭和44年12月24日判決・刑集23巻12号1625頁など参照)または人権B規約17条と抵触するときは「~してもよい」旨の法規範が存在するということになる(なお、私生活上の自由に他者と性交等をする自由が含まれることについては特に異論はないと思われる)。
 例えば、日本にかつて存在した鶏姦規定(鶏姦条例~改定律例266条)のように「男性間での肛門性交をしてはならない」という法が現代日本に存在したとしても、自由の観点からは日本国憲法13条及び人権B規約17条、平等の観点からは日本国憲法14条及び人権B規約26条に反し無効なので「~してはならない」旨の法規範は存在しないことになり、むしろ「~してもよい」という法規範が存在することになる。

条例8条1項二号で例示されている「強姦」については、刑法177条が「~してはならない」旨を表明していることは明らかであり、また、同条は違憲または人権B規約違反であるとは考えられていないため、「強姦はしてはならない」旨の法規範は存在すると言える。強姦のほか施行規則15条2項一号が限定列挙している強制わいせつ(刑法176条)などについても同様であり、犯罪類型に関しては少なくとも現時点では問題はない。

一方、近親者間での性交等については、現代日本の刑事に関する法律または条例中に「~してはならない」旨を表明しているものは存在しない(明治初期の新律綱領・改定律例には親属相姦という規定が存在したものの旧刑法で廃止)。民法734条ないし民法736条は性交等に関する規定ではなく婚姻に関する規定であるため、「近親者間での性交等はしてはならない」旨の表明している法規範とは言い難い(ただし、民法734条のうち血縁関係のある近親者に係る部分については婚姻禁止の理由としていわゆる優生学的配慮が挙げられるため、民法734条は「血縁関係のある近親者間での性交はしてはならない」旨を暗に含む法規範であると言うことは不可能とまでは言い難い)。
 民法についてはさておき、東京都青少年健全育成条例7条二号などは近親者間での性交等について「~してはならない」旨を表明していると言えなくもない。しかし、前述のように日本国憲法または人権B規約との関係で法規範として認められるか否か検討される必要がある。
 日本国憲法13条は私生活上の行為は原則として自由であることを規定している一方、行為が他者の権利等と衝突するときはそれとの調整の結果として制限され(ているように見え)ることがあることも定めている。他者と性交等をすることは原則として自由であるけれど、前述の強姦や強制わいせつに該当する性交等は相手方の性的自由を侵害するものであり、その方が重いので制限することは憲法に反しない。
 近親者間での性交等について検討すると、血縁関係のある近親者間での性交については、その結果として生まれてくることがある子供の健康という利益と衝突するので制限される可能性があるのに対し、血縁関係のない近親者間での性交等や血縁関係のある近親者の性交類似行為については衝突する利益は存在しないため、原則通り自由(「~してもよい」)ということになる。
 なお、「道徳の保護」を理由に私生活上の自由その他の自由を制限することはできない。まず、日本国憲法は多数派の自由だけでなく少数派も含めたすべての個人の自由を保障していることは論をまたない。また、過半数による決議では変更できない日本国憲法によって各種の自由が保障されていることの意義は、そのときの多数派が他者の権利等を害するわけではない少数派の行為について「それでも、自分たちはそれはしてはならないと思うから」などと言って当該行為を制限する法律を制定したとしてもその効力を認めないことによって少数派の自由を保障することにある。
 ところで、「道徳」とは、ある時代のある社会において一般的に承認されている(不文的)規範をいう。ここでは「~してはならない」ということが大多数の人間によって支持されているかどうかだけが問題であり、「~してはならない」とする理由はまったく問題にならない。
 したがって、「道徳の保護」を理由に自由を制限することを認めるということは、ただ大多数の人間が「~してはならない」と思っているということを理由に自由の制限を認めるということであり、換言すれば、そのときの少数派の自由は認める必要がないというのと同義。このようなものは、少数派も含めたすべての人間の自由を保障することを目的とする日本国憲法と相容れないことは明らか。
 ちなみに、「道徳の保護」を理由に憲法が保障している私生活上の自由を制限することは認められないということを明言した有名な事例としてアメリカ連邦最高裁のローレンス判決がある。

したがって、東京都青少年健全育成条例によって「近親者間での性交等はしてはならない」旨を表明したとしても、少なくとも血縁関係のない近親者間での性交等や血縁関係のある近親者の性交類似行為に係る部分については「~してもよい」とする日本国憲法13条と抵触するため「~してはならない」旨の法規範は存在しないことになり、むしろ「~してもよい」旨の法規範が存在することになる(血縁関係のある近親者間での性交については判断保留)。

道徳規範については、条例8条1項二号中の「社会規範」に含めてよいかに関しては、まず法規範と道徳規範が一致するときは検討する必要がない。検討すべきなのは、法規範では「~してもよい」とされるが道徳規範では「~してはならない」とされる場合。

近親相姦類型のうち、血縁関係のない近親者との性交等や血縁関係のある近親者の性交類似行為については前述のように「~してもよい」という法規範が存在する。そして、仮に「~してはならない」ということが大多数の人間に支持されていて道徳規範として存在したならば(これは事実認定の問題)、両者は矛盾する。
 この場合、少数派も含めたすべての個人の自由を保障することを目的とし「道徳の保護」を理由に自由を制限することを認めない日本国憲法から直接間接の授権を受けて制定される条例において日本国憲法よりも道徳規範を優先することはできないと考えられるので、「血縁関係のない近親者との性交等や血縁関係のある近親者の性交類似行為はしてはならない」という道徳規範が存在したとしてもそれは条例8条1項二号がいうところの「社会規範」としては認められないと考えられる。

上記からすると、条例8条1項二号中の「強姦等の著しく社会規範に反する性交又は性交類似行為」には、近親相姦類型に関しては「血縁関係のある近親者間の性交」については含まれるとする余地があるとしても、憲法13条に適合するよう解釈すればそれ以外の部分は含まれないとするのが解釈上妥当。

東京都議会(平成22年12月8日)における「著しく社会規範に反する性交等とは(中略)。具体的には、被害者の意思を抑圧するものとして極めて悪質な類型である強姦や(中略)いわゆる淫行禁止規定違反行為及び民法により婚姻を禁止されている近親者間の性交及び性交類似行為をいい、これらは東京都規則で明示するものであります。」という答弁からすると、東京都議会としては条例8条1項二号の「著しく社会規範に反する性交等」には近親相姦類型に関して「血縁関係のある近親者間の性交」に係る部分以外も含まれることを予定していたと思われ、それを前提とするならば「血縁関係のある近親者間の性交」に係る部分以外も条例の委任の範囲を超えるとは言えない。
 しかし、東京都議会が何を意図していたかにかかわらず、施行規則15条2項二号は「血縁関係のある近親者間の性交」に係る部分以外は憲法13条に適合するよう解釈した条例8条1項二号の委任の範囲を超える。

(続く)

(3の2)近親相姦類型のうち「血縁関係のある近親者間での性交」は規制対象だがそれ以外の部分は「社会規範」に反せず規制できないとした場合。

この場合、施行規則15条2項二号は「近親者間(民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百三十四条から第七百三十六条までの規定により、婚姻をすることができない者の間をいう。)における性交等」(この「性交等」の意味は同項一号により性交又は性交類似行為)を規制対象としており、規制できない部分を含んでいる。
 そして、施行規則15条2項二号の文言からは「血縁関係のある近親者間の性交」のみを規制対象としていると理解することは明らかに無理であり、同施行規則及び同施行規則に基準を定めるよう委任している条例の文言等を考慮しても施行規則15条2項二号が「血縁関係のある近親者間の性交」のみを規制対象としていると理解することはできない。
 むしろ、不健全図書指定に関する要件を定めている条例8条1項二号中に要件として取り込まれている条例7条二号が「婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為」という要件を定めていることからみれば血縁関係の有無や性交であるか性交類似行為であるかを一切区別せずに規制対象としようとしたものであると理解するのが普通。
 したがって、施行規則15条2項二号は過度に広範であり憲法21条によって全部無効と解するのが妥当(過度に広範については最高裁平成19年9月18日・刑集61巻6号601頁参照)。施行規則15条2項二号が全部無効であれば近親相姦類型については条例8条1項2号中の「東京都規則」が存在しなくなる結果として「東京都規則で定める基準に該当」という要件が満たされることはなく、近親相姦類型で不健全図書指定することは不可能。

また、施行規則15条2項二号の文言からは「血縁関係のある近親者間での性交はしてはならない」理由が優生学的見地であることを読み取ることはできない。もし、その文言が明らかに「血縁関係のある近親者間での性交」のみを規制対象とするものであったならば「血縁関係のある近親者間での性交はしてはならない」理由が優生学的見地であることを単に伝えないだけだけれど、施行規則15条2項二号の文言は「婚姻できない間柄で性交・性交類似行為をしてはならない」という趣旨としか読みようがなく、これは「血縁関係のある近親者間での性交はしてはならない」理由が優生学的見地であること単に伝えないだけではなく、「血縁関係のある近親者間での性交はしてはならない」理由として婚姻できない間柄であるということを挙げることによって「血縁関係のある近親者間での性交はしてはならない」理由が優生学的見地であることを覆い隠し、さらには憲法13条と相容れない「婚姻できない間柄では性交類似行為をしてはならない」「婚姻できない間柄では血縁関係がない場合であっても性交をしてはならない」という一方的な観念をも公権力の担い手である地方公共団体が表明するものであるから、条文の存在自体が憲法13条に照らして妥当でない。

(4)「著しく不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく妨げるものとして、東京都規則で定める基準に該当し」。

日本には、国民に対して義務を課し又は権利を制限するには国民の代表機関である議会によって制定された法律の根拠を要するという法原則が存在する。憲法84条の租税法律主義は租税に関してこの法原則を明文化したものであり(最高裁平成18年3月1日判決・ 民集60巻2号587頁)、憲法31条に含まれる罪刑法定主義もこの法原則の表れ。
 そして、この法原則の意義は、国民に対して義務を課し又は権利を制限するには議会によって制定された法律の根拠を要するとすることによって行政の恣意的活動(課税権・刑罰権の濫用等)を防止し国民の財産その他の法的保護に値する利益を保障することにある。

ところで、国民に対して義務を課し又は権利を制限する法律について国民に不利な形での類推解釈を認めることは、形式的には議会以外に国民に対して義務を課し又は権利を制限する法律を創設する権限を認めるに等しく、実質的にも議会が国民に対して義務を課し又は権利を制限することを予定した範囲を超えて行政に活動することを認めるということであり、これは国民に対して義務を課し又は権利を制限するには議会によって制定された法律の根拠を要するとすることによって行政の恣意的活動を防止し国民の財産その他の法的保護に値する利益を保障することを目的とするこの法原則と相容れない。
 したがって、国民に対して義務を課し又は権利を制限する法律について国民に不利な形での類推解釈は許されない(罪刑法定主義について最高裁昭和30年3月1日判決・刑集9巻3号381頁など、租税法律主義について名古屋高裁平成21年4月23日判決・最高裁HPなど参照。なお、国民に有利な形での類推解釈については最高裁昭和45年10月23日判決・民集24巻11号1617頁など参照)。

また、この法原則は国民と国との関係においてのみ妥当するものではなく住民と地方公共団体との関係においても妥当するものであり、地方自治法14条2項「普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。」はこの法原則を確認的に明文化したもの(国ではなく地方公共団体なので「国民」「法律」の部分はそれぞれ「住民」「条例」と読み替える)。
 なお、租税に関しては地方税法3条(仙台高裁秋田支部昭和57年7月23日判決参照)。

そして、条例8条1項二号は住民の権利(図書の著者の表現の自由及び18歳未満の者の知る自由)を制限するものであるから、条例8条1項二号が規定している要件について類推解釈は許されない。

賛美は日本語の意味としては、物事を評価して「よいものである」旨を述べることを意味する。ある物事を批判しないことは賛美とは言わないのであって、批判していないことを「賛美」に含むと解することは用語の普通の意義からいって無理であり類推解釈というほかない(なお、条例8条1項二号は「よいものである」旨を述べず単に批判していないだけの表現については誇張類型によることを定めているとみられる)。

賛美類型については条例上は「著しく不当に賛美(略)するように、描写し又は表現」が要件なので、その条例から基準を定めるよう委任を受けた規則において「著しく不当に賛美(略)するように、描写し又は表現」とは言えないものを定めれば委任の範囲を超える。
 施行規則15条2項二号では「社会的に是認されているものであるかのように描写し若しくは表現」と定めているところ、批判するように描写又は表現していないというだけで規則が定める要件に該当するとすれば条例の委任の範囲を超える。条例の委任の範囲を超えないようにするには「社会的に是認されているものである」旨を述べている必要があると解するのが妥当。

http://www.asahi.com/articles/ASG5Q7VY1G5QUCVL01N.htmlによると、東京都は「よくないことだと表現されていない」ならば条例8条1項二号「著しく不当に賛美(略)するように、描写し又は表現」→施行規則15条2項二号「社会的に是認されているものであるかのように描写し若しくは表現」という要件に該当するという解釈らしい。
 これは「著しく不当に賛美(略)するように、描写し又は表現」という要件を定める条例8条1項二号から基準を定めるよう委任を受けて制定された施行規則15条2項二号中の「社会的に是認されているものであるかのように描写し若しくは表現」という要件の解釈としては許されない。

(現物が入手できたら続く)

(5の1)条例8条1項二号中の「青少年の健全な成長を阻害するおそれがある」。

この要件が何を意味するかについては、立法者が意図したものという観点からみると、犯罪類型に関しては以前から条例8条1項一号「販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、青少年に対し、著しく性的感情を刺激し、甚だしく残虐性を助長し、又は著しく自殺若しくは犯罪を誘発するものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの」により著しく犯罪を誘発するものについては規制されていたことや条例8条1項二号中の「青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく妨げる」という文言からみて、実際に犯罪を誘発するものであるかは問わず立法者が不健全であると考える思想を青少年が持つ可能性があればこの要件に該当するということを意図したものと考えられ、近親相姦類型についても基本的には同様と考えられる。

また、東京都議会(平成22年12月8日)における「この改正案は、性犯罪の描写を閲覧した青少年が、当該犯罪を犯すことを防止することを直接の目的とするものではないことから」という答弁からも、それが窺える(ただし、「直接の」という部分についてはどう読むべきかの問題は残る)。

しかし、

(続く)

(5の2)「青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの」における「青少年」。

この要件に該当するかの判断に際し、どのような青少年を基準とすべきかについては、結論から書けば通常の17歳11ヶ月の青少年を基準としなければならない。理由は以下の通り。

条例8条に該当するとして不健全図書に指定されたものは条例9条1項により「青少年」(条例2条一号により18歳未満の者を意味する)に対する販売等が禁止される。

ところで、ある図書が成人にとっては有害ではないが青少年にとっては有害とされる場合、青少年に対する販売等を禁止することはできるとしても、成人に対する販売等を禁止することはできない。これは「成人にとっては有害ではないが青少年にとっては有害」という規制理由と「成人に対する販売等を禁止」という規制内容が合致していない以上当然のこと。
 なお、有害図書の自動販売機への収納規制は合憲とされているけれど(最高裁平成元年9月19日判決)、青少年への販売等を規制する手段であることと成人に対する販売等を完全に禁止するわけではなく成人が当該図書を入手する手段を「幾分」制限するにとどまるものであることによる。

同様に、通常の17歳11ヶ月の者にとっては有害ではないが通常の小学生にとっては有害であるとされる場合、小学生に対する販売等を禁止することはできるとしても、17歳11ヶ月の者に対する販売等を禁止することはできない。繰り返しになるけれど、「通常の17歳11ヶ月の者にとっては有害ではないが通常の小学生にとっては有害」という規制理由と「通常の17歳11ヶ月の者に対する販売等を禁止」という規制内容が合致していない。

もし、「青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの」という要件に該当するかの判断に際し、通常の17歳11ヶ月の者を基準とすれば「健全な判断能力の形成を妨げ、健全な成長を阻害するおそれがある」とはいえないが通常の小学生を基準とすれば「健全な判断能力の形成を妨げ、健全な成長を阻害するおそれがある」とされる場合にこの要件に該当するとすれば、通常の17歳11ヶ月の者にとっては有害ではないが通常の小学生にとっては有害であるという理由で通常の17歳11ヶ月の者に対する販売等まで禁止することになる。

(6)不服申立てについて。

各都道府県条例に基づく有害図書・不健全図書指定は行政庁の処分なので(福岡高裁宮崎支部平成7年3月1日判決・判例タイムズ883号119頁、東京地裁平成15年9月25日判決・裁判所HP東京高裁平成16年6月30日判決・裁判所HPなど)、不服申立て手段は、①行政不服審査法に基づく異議申立て、②処分取消訴訟、③処分無効確認訴訟の3つ。ただし、③は要件がきついので処分取消訴訟ができるなら処分取消訴訟の方が良い。
 なお、不健全図書指定処分取消請求を棄却した1審判決に対する控訴を棄却した上記福岡高裁宮崎支部判決に対する上告を最高裁平成11年12月14日判決・集民195号641頁は棄却しているので有害図書・不健全図書指定は処分に該当するという点については決着済みとみられる(処分に該当しないなら訴えを不適法却下するはず)。

①行政不服審査法に基づく異議申立て。

行政不服審査法は平成26年6月6日に改正されたもののまだ施行されておらず、また附則3条により施行前の処分に係るものについては従前の例によることになっているので現在効力を有するもの(改正前のもの)による。

都条例に基づく都知事の処分には上級行政庁は存在せず、また、東京都青少年健全育成条例などには不健全図書指定処分について審査請求できる旨は見あたらないので、行政不服審査法4条1項、6条一号により異議申立てが可能。
 異議申立期間は行政不服審査法45条により「処分があつたことを知つた日の翌日から起算して六十日以内」。「処分があつたことを知つた日」は少し微妙で、不健全図書指定処分は条例8条2項により告示によって行うことになっていることを重視すれば告示があった日(最高裁平成14年10月24日判決・民集56巻8号1903頁参照)。ただし、東京都は不健全指定処分をしたときは各図書類販売業者等にハガキで通知しているみたいなので「処分のあったことを現実に知った日」という解釈もありうる。

行政不服審査法4条1項柱書本文「行政庁の処分(この法律に基づく処分を除く。)に不服がある者は、次条及び第六条の定めるところにより、審査請求又は異議申立てをすることができる。」は不服を申し立てることができる人間を限定していないように見えるけれど、最高裁昭和53年3月14日判決・民集32巻2号211頁により「当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者」に限られる。
 行政事件訴訟法9条1項の「当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」についても「当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者」をいうとされており(最高裁平成元年2月17日判決・民集43巻2号56頁)、条文の文言は違っても結局は同じ。

東京地裁平成15年9月25日判決・裁判所HP東京高裁平成16年6月30日判決・裁判所HPは図書の発行者について処分取消訴訟の原告適格を認めているので、図書の発行者(今回は株式会社KADOKAWA)については異議申立てができると考えられる。
 他に異議申立てできる可能性があるとすれば、発行者に準ずる者として著作者、不健全図書指定処分により当該図書を青少年に販売等してはならない義務・包装義務・区分陳列義務(条例9条)を負う図書類販売業者等、不健全図書指定処分により当該図書を東京都内で図書類販売業者等から購入したりできなくなる青少年。

(続く)

メモ。

ロシアの話。

http://japanese.ruvr.ru/2014_03_03/129351583/
http://itar-tass.com/spb-news/1016878(イタルタス通信の記事)。
http://www.ligainternet.ru/news/news-detail.php?ID=4458(安全なインターネット連盟のプレスリリース)。

上記から分かること。

・裁判所はヴォログダ市裁判所(地裁相当)。判決日は2月21日。
・適用法条はロシア刑法242.1条(児童ポルノの頒布)。
・6本のアニメのタイトル等に関する情報なし(→写実的と言えるようなものだったかどうかは記事からは不明)。

補足。

・ロシアは性的搾取及び性的虐待からの児童の保護に関する欧州評議会条約を批准(2013年12月1日ロシアについて発効)しているので、「非実在の児童の似せて作られた表現または写実的なイメージ」(simulated representations or realistic images of a non-existent child)についても児童ポルノに含まれるはず(20条3項に基づき製造・所持との関係では留保しているけれど頒布には影響しない)。

補足2。

ロシアといえば、同性愛パレードを不許可としたのはヨーロッパ人権条約11条違反及び11条とあわせた14条違反としたヨーロッパ人権裁判所2010年10月21日判決(特に78~79、86段落)からすれば10条違反とされることは確実であるにもかかわらず、また、同性愛について未成年者に宣伝することを違法とするロシアのリャザン州法が人権B規約26条とあわせて読む19条に反するという自由権規約委員会見解を出されたにもかかわらず、いわゆる同性愛宣伝禁止法(未成年者の健康及び発達に有害な情報から未成年者を保護する法律5条2項4号や行政的違法行為法6.21条などのこと)を制定して実際に適用しているくらいで、少なくとも国際的な基準からみれば表現の自由等は実質的にみて保障されていないと言って過言でない。

なお、ロシアの同性愛宣伝禁止法と改正東京都青少年健全育成条例のうち近親相姦類型(血縁関係のある者との性交に関する部分を除く)は、自分たちが気に入らない思想・表現について「不健全」「青少年の健全な育成を害するおそれがある」などと称して規制するという本質はまったく同じ。東京都といえば、同性愛者差別事件として有名な府中青年の家事件(東京高裁平成9年9月16日判決・判例タイムズ986号206頁)も起こしているしロシアとは似た者同士。

雑記(メモ)。

BS日テレで11日22時から放送された「深層NEWS」の児童ポルノ特集に出てきた「G8諸国漫画・アニメの規制」というフリップで、フランス・イギリス・カナダと同様にイタリア(とドイツ)が○になってたけど、少なくともイタリアは写実的なもの限定のはずで、但書もつけずに同様に○とするのは問題(少なくともBS日テレは調査不足。それに規制「有」「無」ではなく「○」「×」という表記もどうかと思う)。

イタリアの児童ポルノ規定は、イタリア刑法600条の3(児童ポルノ製造、販売、頒布、提供、定義)・600条の4(故意の入手所持)・600条の4の1(バーチャル児童ポルノ)。

児童ポルノ(Pornografia minorile)の定義は600条の3第7項「Ai fini di cui al presente articolo per pornografia minorile si intende ogni rappresentazione, con qualunque mezzo, di un minore degli anni diciotto coinvolto in attività sessuali esplicite, reali o simulate, o qualunque rappresentazione degli organi sessuali di un minore di anni diciotto per scopi sessuali.」。

文言的には、イタリアは2002年に批准している児童の売買等に関する児童の権利条約選択議定書2条(c)の定義と同じ。ただし、上記定義規定を追加したイタリア刑法2012年改正は性的搾取及び性的虐待からの児童の保護に関する欧州評議会条約の批准にあわせてのものなので、イタリア刑法における定義は同条約20条2項の定義を取り込んだ上で、さらに児童の売買等に関する児童の権利条約選択議定書2条(c)の定義にある「by whatever means」(con qualunque mezzo)も取り込んだと見るのが立法経緯からは妥当。

で、児童の売買等に関する児童の権利条約選択議定書2条(c)における「child」は実在の児童を意味するというのが世界的にも通説的見解。性的搾取及び性的虐待からの児童の保護に関する欧州評議会条約20条2項は同条3項及び注釈書144段落とあわせて読めば「simulated representations or realistic images of a non-existent child」については児童ポルノに含めていると解しうるものの「非実在の児童の非写実的な画像」まで児童ポルノに含めているとは読めず、むしろ、仮に「非実在の児童の非写実的な画像」まで児童ポルノに含めているとすると「simulated representations or realistic images of a non-existent child」については留保を認めるが「非実在の児童の非写実的な画像」については留保を認めていないということになり明らかに不合理なので「非実在の児童の非写実的な画像」は児童ポルノに含まれていないと読むのが解釈として自然。

さらに、イタリア刑法600条の4の1は、児童またはその一部の画像を使った「バーチャル児童ポルノ」についても600条の3及び600条の4を適用するが刑は3分の1減少するということを定めているところ、「バーチャル児童ポルノ」はグラフィック処理技術を用いて作成されたことや現実の状況のように見えること等が要件なので一般的な漫画・アニメのキャラクターのような「非実在の児童の非写実的な画像」は該当しない。それに、児童の画像を使いグラフィック処理技術を用いて作成された現実の状況のように見える画像は通常の児童ポルノより刑が減少する「バーチャル児童ポルノ」として扱われるのに「非実在の児童の非写実的な画像」が通常の児童ポルノとして扱われるというのは明らかに不合理なので、「非実在の児童の非写実的な画像」は「バーチャル児童ポルノ」にも通常の児童ポルノにも該当しないと解釈するのが自然。

ところで、番組内で出てきたフリップには「公益財団法人日工組社会安全財団調べ」とあり、この法人は「G8諸国における児童ポルノ対策に関する調査報告書」という文書を公表しているけれど、例えばアメリカについて児童ポルノの定義規定(合衆国法典18編2256条(8))だけ紹介し積極的抗弁に関する規定(特に2252A条(c))は紹介していない等かなり問題のある内容で、はっきり言って質が悪い。

2013年児童ポルノ関連判例。

オランダ最高裁2013年3月12日判決

・絵やCGは一見して本物の児童の画像と区別できない場合を除いて児童ポルノ(オランダ刑法旧240b条。定義は18歳未満が性的行為に関与または見かけ上関与している画像。現行法でも定義は変わっていない)に該当せず、国際法も異なる結論につながるものではないという判決。

・オランダに関係がある国際法は次の5件。判決文では①は言及あり。②は起草中の枠組決定という形で一応出てくる。③は名前が出てくる。④⑤については言及なし。

児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約選択議定書(2005年8月23日批准
EU枠組決定2004/68/JBZ(2006年1月20日までに国内法を整備)
サイバー犯罪に関する条約(2007年3月1日オランダについて効力発生。9条に関する留保なし
性的搾取及び性的虐待からの児童の保護に関する欧州評議会条約(2010年7月1日発効。20条に関する留保なし
EU指令2011/93/EU(2013年12月18日までに国内法を整備)

追記。オランダ最高裁イラスト児童ポルノ事件判例(うぐいすリボンHP)
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ドイツ連邦通常裁判所2013年3月19日判決

・文章はドイツ刑法184b条における「実際のまたはリアルな出来事を再現する」という要件を満たさないので、その所持が所持罪を構成することはないという判決。

・ドイツ連邦通常裁判所は通常の民事事件・刑事事件における最高裁。
・ドイツでは14歳未満が子供ポルノ(ドイツ刑法184b条)、14歳以上18歳未満が少年ポルノ(ドイツ刑法184c条)。
・追記。ドイツ連邦最高(通常)裁判所メールテキスト児童ポルノ事件判決(うぐいすリボンHP)
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水原地方法院(控訴部)2013年6月27日判決
ソウル北部地方法院2013年5月27日決定
水原地方法院安山支院2013年8月12日決定

・1番上は、大人が学校の制服を着て性行為をすることを内容とするAVは「児童青少年利用淫乱物」(=児童ポルノ。児童・青少年の性保護に関する法律2条5項)に該当しないとした判決。
・2番目以降は、同条等に関する違憲法律審判の提請決定。
・追記。韓国アチョン法:バイブルブラック事件判例(うぐいすリボンHP)
・追記。1番上とは別の事件に関して大法院2014年9月24日判決ほか計3件(opennetHP)。外見や身体的発育状態等に照らし見かけ上明らかに児童青少年と認識することができる人とは認められない成人女性が制服を着て成人男性と性行為をする内容の動画は児童青少年利用淫乱物に該当しないとして、1審2審の有罪判決を破棄して仁川地方法院に差し戻した模様。http://www.shinmoongo.net/sub_read.html?uid=65035http://www.asiae.co.kr/news/view.htm?idxno=2014092411332444302
・追記。http://opennet.or.kr/7534水原地方法院城南支院2014年9月24日判決(opennetHP)韓国地裁における非実在児童ポルノの合憲限定解釈無罪事件(うぐいすリボンHP)
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