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論文批判その3の2。

論文批判その3の1に続き、

渡辺真由子著「子どもポルノをめぐる国際動向と人権」(以下、「渡辺論文」というときはこの論文を指します)における引用に関する問題点について批判を書こうと思います。

前回の主たるテーマは被引用文献の質の問題でしたが、今回は以下の3点に関して書きます。

③外国語で書かれている文献を翻訳して引用する際の翻訳が妥当なものであるかという問題。
④出典の明示が適切なものであるかという問題。
⑤その他の問題。

(1)直接引用の体裁で記述されているが原典には部分的に一致する記述しかなく完全に対応する記述は存在しない疑いがある部分。

「渡辺論文」16頁本文7~10行目の部分(空白行や各頁上部にある「渡辺論文」の掲載誌名等及びタイトルは本文に含みません。また、以下、この部分を「渡辺論文の引用部分2」と表記します)。

「渡辺論文の引用部分2」は、「渡辺論文」脚注69及び参考文献[06]に記載されているDr. Ethel Quayle・Lars Loof・Tink Palmer著「CHILD PORNOGRAPHY AND SEXUAL EXPLOITATION OF CHILDREN ONLINE」(2008年)という文献(以下、この文献を「Dr. Ethel Quayle・Lars Loof・Tink Palmer文献」と表記します。なお、著者名については後述するhttp://www.ecpat.org/wp-content/uploads/2016/04/Thematic_Paper_ICTPsy_ENG.pdfの1頁より前の頁番号が振られていない部分の5頁目によります)の17~20頁からの直接引用という体裁で記述されているところ、

17~20頁という広い範囲のどこかという形での出所表記は出所の「明示」と言えるかは疑問ですが、それはさておき、

原典である「Dr. Ethel Quayle・Lars Loof・Tink Palmer文献」は、「渡辺論文」参考文献[06]の記述によれば2014年6月12日時点ではhttp://resources.ecpat.net/worldcongressIII/PDF/Publications/ICT_Psychosocial/Thematic_Paper_ICTPsy_ENG.pdf(リンク切れ)に掲載されていたようですが、現在はリンク切れになっており、ECPAT Internationalホームページで検索してみると、

(ECPAT InternationalホームページのURLは以前はhttp://www.ecpat.net/でしたが、現在はhttp://www.ecpat.org/に変わっています。なお、現在http://www.ecpat.net/にアクセスしようとするとhttp://www.ecpat.org/に飛ばされます。)

http://www.ecpat.org/wp-content/uploads/2016/04/Thematic_Paper_ICTPsy_ENG.pdfに掲載されている文献と「渡辺論文」参考文献[06]に記載されている文献は、タイトルが一致し、筆頭著者の名のイニシャル及び姓が一致し、著者が3人以上であるということが一致し、作成年ないし発行年もhttp://www.ecpat.org/wp-content/uploads/2016/04/Thematic_Paper_ICTPsy_ENG.pdfに掲載されている文献の1頁より前の頁番号が振られていない部分の最初の頁中の「25-28 November 2008」という記載等に照らせば一致し、URLも最後の「Thematic_Paper_ICTPsy_ENG.pdf」という部分が一致していることから、

「渡辺論文」参考文献[06]に記載されている文献は、現在はhttp://www.ecpat.org/wp-content/uploads/2016/04/Thematic_Paper_ICTPsy_ENG.pdfに掲載されていると考えられ、

また、そもそも「Dr. Ethel Quayle・Lars Loof・Tink Palmer文献」に「改訂版」「2版」といったものが存在するという情報は見あたりませんが、論文その他の文献においてタイトルに「改訂版」「2版」などといった改訂したものであることを示す文言を付したうえで内容を改めるということはあると思いますので念のため検討すると、

「渡辺論文」参考文献[06]に記載されている文献のタイトル等には改訂したものであることを示す文言は付されていませんし発行年ないし出版年も「(2008)」と記載されていることから、「渡辺論文」参考文献[06]に記載されているhttp://resources.ecpat.net/worldcongressIII/PDF/Publications/ICT_Psychosocial/Thematic_Paper_ICTPsy_ENG.pdf(リンク切れ)に掲載されていた「Dr. Ethel Quayle・Lars Loof・Tink Palmer文献」は2008年に発表されたものであるとともに改訂版などではないと考えられ、

また、http://www.ecpat.org/wp-content/uploads/2016/04/Thematic_Paper_ICTPsy_ENG.pdfは、ECPAT Internationalホームページにおいて「RESOURCES」をクリックしてhttp://www.ecpat.org/resourcesに行き、そこで画面右側の「Search」のところにあるスライドバーを「2008」にあわせたときに出てくる画面の中にある

「2008 - World Congress
World Congress III: Child
Pornography and Sexual
Exploitation of Children Online」

という部分をクリックしたときに出てくる「select your download」というところの「Report Type」というところをクリックしたときに出てくる項目の中から「English」をクリックするとたどり着くわけですが、スライドバーを「2008」こあわせたときに出てくる画面中にあるということ等からhttp://www.ecpat.org/wp-content/uploads/2016/04/Thematic_Paper_ICTPsy_ENG.pdfに掲載されている文献も2008年に発表されたものであると考えられ、内容的にも最初の頁中の「25-28 November 2008」という記載や106頁以下の「Bibliography」のところで何ヵ所か記載されている「Accessed on 15 October 2008」との文言から2008年10月15日から同年11月28日までに発表されたものであると考えられ、また、タイトル等にも改訂されたものであることを示す文言は付されていないことから改訂版などではないと考えられ、

さらに、そもそも2008年11月25~28日に開催されたthe World Congress III Against Sexual Exploitation of Children and Adolescentsのために作成されたと思われる「Dr. Ethel Quayle・Lars Loof・Tink Palmer文献」の内容をthe World Congress III Against Sexual Exploitation of Children and Adolescents後に改訂したりするということ自体考え難いのであり、

以上より、「渡辺論文」参考文献[06]に記載されている「Dr. Ethel Quayle・Lars Loof・Tink Palmer文献」とhttp://www.ecpat.org/wp-content/uploads/2016/04/Thematic_Paper_ICTPsy_ENG.pdfに掲載されている文献は同一であると考えられますので、

以下では、「渡辺論文」参考文献[06]に記載されている「Dr. Ethel Quayle・Lars Loof・Tink Palmer文献」の少なくとも18頁6~13行目の内容とhttp://www.ecpat.org/wp-content/uploads/2016/04/Thematic_Paper_ICTPsy_ENG.pdfに掲載されている文献の少なくとも18頁6~13行目の内容が同一であろうということを前提としますが、

http://www.ecpat.org/wp-content/uploads/2016/04/Thematic_Paper_ICTPsy_ENG.pdfに掲載されている文献(以下、この文献も「Dr. Ethel Quayle・Lars Loof・Tink Palmer文献」と表記します)の17~20頁を読んでみると、その中に「渡辺論文の引用部分2」に完全に対応する記述は存在しません。

用いられている単語などを比較すると、「渡辺論文の引用部分2」は、「Dr. Ethel Quayle・Lars Loof・Tink Palmer文献」18頁6行目の「It」から同頁8行目の「however」までの部分(以下、この部分を「Dr. Ethel Quayle・Lars Loof・Tink Palmer文献の被引用部分2前半」と表記します)と、

「Dr. Ethel Quayle・Lars Loof・Tink Palmer文献」同頁12行目の前の方の「the」から同頁13行目までの部分(以下、この部分を「Dr. Ethel Quayle・Lars Loof・Tink Palmer文献の被引用部分2後半」と表記します)を、

それらの間にある3行ちょっとを削って無理やり繋いだ感じに見えますが、そうだとすると、直接引用の体裁で記述されているにもかかわらず原典に存在する3行ちょっとを削っていることになります。

さらに、「渡辺論文の引用部分2」は、「Dr. Ethel Quayle・Lars Loof・Tink Palmer文献の被引用部分2前半」及び「Dr. Ethel Quayle・Lars Loof・Tink Palmer文献の被引用部分2後半」を直接引用する際の翻訳としてはデタラメと評するほかないものであることは明白でありいちいち指摘するまでもないと思いますが、

重要な部分についてのみあえて指摘するならば、「Dr. Ethel Quayle・Lars Loof・Tink Palmer文献の被引用部分2前半」は「pseudo-photographs」(擬似写真。写真ではないが写真に見える物)という文言を用いており、また、「Dr. Ethel Quayle・Lars Loof・Tink Palmer文献の被引用部分2前半」には「実在しない子どもが登場する」という意味の単語は存在しませんが、

「渡辺論文の引用部分2」1文目は「実在しない子どもが登場する描写物」という文言を用いており、「描写物」とは写真に見えない物まで含むと読み手に認識される文言であり、さらに「実在しない子どもが登場する」という原典には存在しない修飾語を加えている点で、直接引用する際の翻訳として許される範囲内にはないと言わざるを得ません。

また、「Dr. Ethel Quayle・Lars Loof・Tink Palmer文献の被引用部分2後半」の主節の主語の部分には「子どもを」「性的に」「バーチャルな」「ポルノ」といった意味の語は存在しませんが、

「渡辺論文の引用部分2」2文目は「子どもを性的に虐待するようなバーチャルなポルノ」という文言を用いており、この点についても直接引用する際の翻訳として許される範囲内にはないと言わざるを得ません。

念のため書いておきますが、「渡辺論文の引用部分2」の翻訳は、もし仮に「渡辺論文の引用部分2」が直接引用の体裁ではなく間接引用の体裁で記述されていたならばそれでも批判は免れないものの文脈を考慮した意訳であると強弁する余地がないでもないと思いますが、直接引用する際の翻訳としては論外ということです。
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Author:stuvw

民放4局以下地域在住。
アニメ視聴はBSなどで。

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