改正東京都青少年健全育成条例の解釈論と「妹ぱらだいす2」に関するメモ。

http://www.metro.tokyo.jp/INET/KONDAN/2014/05/40o5d100.htm
http://mainichi.jp/select/news/20140513k0000m040107000c.html
http://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20140512/4390261.html
http://sankei.jp.msn.com/life/news/140512/trd14051220430020-n1.htm

新基準(今回は東京都青少年健全育成条例8条1項二号、同施行規則15条2項二号)により5月16日付で不健全図書に指定された「妹ぱらだいす!2 ~お兄ちゃんと5人の妹のも~っと!エッチしまくりな毎日~」という作品は読んだことがないので個別的なことは現時点では完全には書けないけれど、資料が多少出てきているので思ったこと等をメモ。

(1)描写内容等。

現物を入手してからでないと完全にはわからないものの、http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/09_singi/647/647betten1.pdfによると、「兄と実妹」及び「兄と異母妹」間の性交及び性交類似行為(以下、あわせて「性交等」)の描写があるらしい。
 
資料中の「実妹」「異母妹」という文言の使い分けは疑問だけど(普通「実妹」といえば血縁関係のある妹のことで異母妹も含まれる)、「実妹」が「異母妹」とは別の概念として使われていることから「実妹」に関しては少なくとも同母のはず。http://www.asahi.com/articles/ASG5Q7VY1G5QUCVL01N.htmlによると、家族構成は父親1人、母親5人、兄と妹のうちの1人は同母兄妹、他は異母兄妹。
 
性交の描写は少なくとも2回、おそらく性交類似行為の描写の方が多い。

(2)民法734条。

生物学的に同母兄妹である「兄」及び「実妹」については民法734条によって婚姻が禁止される近親者(2親等の傍系血族)にあたるとみられる。

一方、生物学的に異母兄妹である「兄」及び「異母妹」については、この時点では民法734条によって婚姻が禁止される近親者(2親等の傍系血族)かどうかははっきりしない。「兄」または「異母妹」の少なくとも一方について、出生以前に両親が婚姻したことがなくもしくは婚姻したことがあっても婚姻解消から出生まで300日を超えていて、かつ、生物学的な父から認知されていなければ、「兄」「異母妹」は法律上は父を共通としないので2親等の傍系血族ではない。
 この場合については非公式見解ながら近親相姦類型の規制対象外であることが示されている(http://www.asahi.com/showbiz/column/animagedon/TKY201108280112.html)。

(現物が入手できたら続く)

(3の1)条例8条1項二号中の「強姦等の著しく社会規範に反する性交又は性交類似行為」の意義。

「強姦等の著しく社会規範に反する性交又は性交類似行為」に関して問題となるのは「社会規範」の意義。通常、社会規範というときには法規範のほか道徳規範なども含まれる。このうち、法規範については条例8条1項二号中の「社会規範」に含まれることは問題ないとして、道徳規範については条例8条1項二号中の「社会規範」に含めてよいかは検討を要する。

法規範については「社会規範」に含まれることは問題ないとしても、具体的事例において条例8条1項二号の適用が問題となるときにいかなる法規範が存在しているかは検討されなければならない。「~してはならない」旨を表明している法律や条例が存在していたとしても、それだけでは「~してはならない」旨の法規範が存在しているとはいえない。
 法律や条例よりも上位であり様々な自由を保障している日本国憲法または人権B規約と抵触しているときはその法律や条例は無効であって、「~してはならない」旨の法規範は存在しないことになり、むしろ私生活上の自由を保障している日本国憲法13条(最高裁昭和44年12月24日判決・刑集23巻12号1625頁など参照)または人権B規約17条と抵触するときは「~してもよい」旨の法規範が存在するということになる(なお、私生活上の自由に他者と性交等をする自由が含まれることについては特に異論はないと思われる)。
 例えば、日本にかつて存在した鶏姦規定(鶏姦条例~改定律例266条)のように「男性間での肛門性交をしてはならない」という法が現代日本に存在したとしても、自由の観点からは日本国憲法13条及び人権B規約17条、平等の観点からは日本国憲法14条及び人権B規約26条に反し無効なので「~してはならない」旨の法規範は存在しないことになり、むしろ「~してもよい」という法規範が存在することになる。

条例8条1項二号で例示されている「強姦」については、刑法177条が「~してはならない」旨を表明していることは明らかであり、また、同条は違憲または人権B規約違反であるとは考えられていないため、「強姦はしてはならない」旨の法規範は存在すると言える。強姦のほか施行規則15条2項一号が限定列挙している強制わいせつ(刑法176条)などについても同様であり、犯罪類型に関しては少なくとも現時点では問題はない。

一方、近親者間での性交等については、現代日本の刑事に関する法律または条例中に「~してはならない」旨を表明しているものは存在しない(明治初期の新律綱領・改定律例には親属相姦という規定が存在したものの旧刑法で廃止)。民法734条ないし民法736条は性交等に関する規定ではなく婚姻に関する規定であるため、「近親者間での性交等はしてはならない」旨の表明している法規範とは言い難い(ただし、民法734条のうち血縁関係のある近親者に係る部分については婚姻禁止の理由としていわゆる優生学的配慮が挙げられるため、民法734条は「血縁関係のある近親者間での性交はしてはならない」旨を暗に含む法規範であると言うことは不可能とまでは言い難い)。
 民法についてはさておき、東京都青少年健全育成条例7条二号などは近親者間での性交等について「~してはならない」旨を表明していると言えなくもない。しかし、前述のように日本国憲法または人権B規約との関係で法規範として認められるか否か検討される必要がある。
 日本国憲法13条は私生活上の行為は原則として自由であることを規定している一方、行為が他者の権利等と衝突するときはそれとの調整の結果として制限され(ているように見え)ることがあることも定めている。他者と性交等をすることは原則として自由であるけれど、前述の強姦や強制わいせつに該当する性交等は相手方の性的自由を侵害するものであり、その方が重いので制限することは憲法に反しない。
 近親者間での性交等について検討すると、血縁関係のある近親者間での性交については、その結果として生まれてくることがある子供の健康という利益と衝突するので制限される可能性があるのに対し、血縁関係のない近親者間での性交等や血縁関係のある近親者の性交類似行為については衝突する利益は存在しないため、原則通り自由(「~してもよい」)ということになる。
 なお、「道徳の保護」を理由に私生活上の自由その他の自由を制限することはできない。まず、日本国憲法は多数派の自由だけでなく少数派も含めたすべての個人の自由を保障していることは論をまたない。また、過半数による決議では変更できない日本国憲法によって各種の自由が保障されていることの意義は、そのときの多数派が他者の権利等を害するわけではない少数派の行為について「それでも、自分たちはそれはしてはならないと思うから」などと言って当該行為を制限する法律を制定したとしてもその効力を認めないことによって少数派の自由を保障することにある。
 ところで、「道徳」とは、ある時代のある社会において一般的に承認されている(不文的)規範をいう。ここでは「~してはならない」ということが大多数の人間によって支持されているかどうかだけが問題であり、「~してはならない」とする理由はまったく問題にならない。
 したがって、「道徳の保護」を理由に自由を制限することを認めるということは、ただ大多数の人間が「~してはならない」と思っているということを理由に自由の制限を認めるということであり、換言すれば、そのときの少数派の自由は認める必要がないというのと同義。このようなものは、少数派も含めたすべての人間の自由を保障することを目的とする日本国憲法と相容れないことは明らか。
 ちなみに、「道徳の保護」を理由に憲法が保障している私生活上の自由を制限することは認められないということを明言した有名な事例としてアメリカ連邦最高裁のローレンス判決がある。

したがって、東京都青少年健全育成条例によって「近親者間での性交等はしてはならない」旨を表明したとしても、少なくとも血縁関係のない近親者間での性交等や血縁関係のある近親者の性交類似行為に係る部分については「~してもよい」とする日本国憲法13条と抵触するため「~してはならない」旨の法規範は存在しないことになり、むしろ「~してもよい」旨の法規範が存在することになる(血縁関係のある近親者間での性交については判断保留)。

道徳規範については、条例8条1項二号中の「社会規範」に含めてよいかに関しては、まず法規範と道徳規範が一致するときは検討する必要がない。検討すべきなのは、法規範では「~してもよい」とされるが道徳規範では「~してはならない」とされる場合。

近親相姦類型のうち、血縁関係のない近親者との性交等や血縁関係のある近親者の性交類似行為については前述のように「~してもよい」という法規範が存在する。そして、仮に「~してはならない」ということが大多数の人間に支持されていて道徳規範として存在したならば(これは事実認定の問題)、両者は矛盾する。
 この場合、少数派も含めたすべての個人の自由を保障することを目的とし「道徳の保護」を理由に自由を制限することを認めない日本国憲法から直接間接の授権を受けて制定される条例において日本国憲法よりも道徳規範を優先することはできないと考えられるので、「血縁関係のない近親者との性交等や血縁関係のある近親者の性交類似行為はしてはならない」という道徳規範が存在したとしてもそれは条例8条1項二号がいうところの「社会規範」としては認められないと考えられる。

上記からすると、条例8条1項二号中の「強姦等の著しく社会規範に反する性交又は性交類似行為」には、近親相姦類型に関しては「血縁関係のある近親者間の性交」については含まれるとする余地があるとしても、憲法13条に適合するよう解釈すればそれ以外の部分は含まれないとするのが解釈上妥当。

東京都議会(平成22年12月8日)における「著しく社会規範に反する性交等とは(中略)。具体的には、被害者の意思を抑圧するものとして極めて悪質な類型である強姦や(中略)いわゆる淫行禁止規定違反行為及び民法により婚姻を禁止されている近親者間の性交及び性交類似行為をいい、これらは東京都規則で明示するものであります。」という答弁からすると、東京都議会としては条例8条1項二号の「著しく社会規範に反する性交等」には近親相姦類型に関して「血縁関係のある近親者間の性交」に係る部分以外も含まれることを予定していたと思われ、それを前提とするならば「血縁関係のある近親者間の性交」に係る部分以外も条例の委任の範囲を超えるとは言えない。
 しかし、東京都議会が何を意図していたかにかかわらず、施行規則15条2項二号は「血縁関係のある近親者間の性交」に係る部分以外は憲法13条に適合するよう解釈した条例8条1項二号の委任の範囲を超える。

(続く)

(3の2)近親相姦類型のうち「血縁関係のある近親者間での性交」は規制対象だがそれ以外の部分は「社会規範」に反せず規制できないとした場合。

この場合、施行規則15条2項二号は「近親者間(民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百三十四条から第七百三十六条までの規定により、婚姻をすることができない者の間をいう。)における性交等」(この「性交等」の意味は同項一号により性交又は性交類似行為)を規制対象としており、規制できない部分を含んでいる。
 そして、施行規則15条2項二号の文言からは「血縁関係のある近親者間の性交」のみを規制対象としていると理解することは明らかに無理であり、同施行規則及び同施行規則に基準を定めるよう委任している条例の文言等を考慮しても施行規則15条2項二号が「血縁関係のある近親者間の性交」のみを規制対象としていると理解することはできない。
 むしろ、不健全図書指定に関する要件を定めている条例8条1項二号中に要件として取り込まれている条例7条二号が「婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為」という要件を定めていることからみれば血縁関係の有無や性交であるか性交類似行為であるかを一切区別せずに規制対象としようとしたものであると理解するのが普通。
 したがって、施行規則15条2項二号は過度に広範であり憲法21条によって全部無効と解するのが妥当(過度に広範については最高裁平成19年9月18日・刑集61巻6号601頁参照)。施行規則15条2項二号が全部無効であれば近親相姦類型については条例8条1項2号中の「東京都規則」が存在しなくなる結果として「東京都規則で定める基準に該当」という要件が満たされることはなく、近親相姦類型で不健全図書指定することは不可能。

また、施行規則15条2項二号の文言からは「血縁関係のある近親者間での性交はしてはならない」理由が優生学的見地であることを読み取ることはできない。もし、その文言が明らかに「血縁関係のある近親者間での性交」のみを規制対象とするものであったならば「血縁関係のある近親者間での性交はしてはならない」理由が優生学的見地であることを単に伝えないだけだけれど、施行規則15条2項二号の文言は「婚姻できない間柄で性交・性交類似行為をしてはならない」という趣旨としか読みようがなく、これは「血縁関係のある近親者間での性交はしてはならない」理由が優生学的見地であること単に伝えないだけではなく、「血縁関係のある近親者間での性交はしてはならない」理由として婚姻できない間柄であるということを挙げることによって「血縁関係のある近親者間での性交はしてはならない」理由が優生学的見地であることを覆い隠し、さらには憲法13条と相容れない「婚姻できない間柄では性交類似行為をしてはならない」「婚姻できない間柄では血縁関係がない場合であっても性交をしてはならない」という一方的な観念をも公権力の担い手である地方公共団体が表明するものであるから、条文の存在自体が憲法13条に照らして妥当でない。

(4)「著しく不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく妨げるものとして、東京都規則で定める基準に該当し」。

日本には、国民に対して義務を課し又は権利を制限するには国民の代表機関である議会によって制定された法律の根拠を要するという法原則が存在する。憲法84条の租税法律主義は租税に関してこの法原則を明文化したものであり(最高裁平成18年3月1日判決・ 民集60巻2号587頁)、憲法31条に含まれる罪刑法定主義もこの法原則の表れ。
 そして、この法原則の意義は、国民に対して義務を課し又は権利を制限するには議会によって制定された法律の根拠を要するとすることによって行政の恣意的活動(課税権・刑罰権の濫用等)を防止し国民の財産その他の法的保護に値する利益を保障することにある。

ところで、国民に対して義務を課し又は権利を制限する法律について国民に不利な形での類推解釈を認めることは、形式的には議会以外に国民に対して義務を課し又は権利を制限する法律を創設する権限を認めるに等しく、実質的にも議会が国民に対して義務を課し又は権利を制限することを予定した範囲を超えて行政に活動することを認めるということであり、これは国民に対して義務を課し又は権利を制限するには議会によって制定された法律の根拠を要するとすることによって行政の恣意的活動を防止し国民の財産その他の法的保護に値する利益を保障することを目的とするこの法原則と相容れない。
 したがって、国民に対して義務を課し又は権利を制限する法律について国民に不利な形での類推解釈は許されない(罪刑法定主義について最高裁昭和30年3月1日判決・刑集9巻3号381頁など、租税法律主義について名古屋高裁平成21年4月23日判決・最高裁HPなど参照。なお、国民に有利な形での類推解釈については最高裁昭和45年10月23日判決・民集24巻11号1617頁など参照)。

また、この法原則は国民と国との関係においてのみ妥当するものではなく住民と地方公共団体との関係においても妥当するものであり、地方自治法14条2項「普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。」はこの法原則を確認的に明文化したもの(国ではなく地方公共団体なので「国民」「法律」の部分はそれぞれ「住民」「条例」と読み替える)。
 なお、租税に関しては地方税法3条(仙台高裁秋田支部昭和57年7月23日判決参照)。

そして、条例8条1項二号は住民の権利(図書の著者の表現の自由及び18歳未満の者の知る自由)を制限するものであるから、条例8条1項二号が規定している要件について類推解釈は許されない。

賛美は日本語の意味としては、物事を評価して「よいものである」旨を述べることを意味する。ある物事を批判しないことは賛美とは言わないのであって、批判していないことを「賛美」に含むと解することは用語の普通の意義からいって無理であり類推解釈というほかない(なお、条例8条1項二号は「よいものである」旨を述べず単に批判していないだけの表現については誇張類型によることを定めているとみられる)。

賛美類型については条例上は「著しく不当に賛美(略)するように、描写し又は表現」が要件なので、その条例から基準を定めるよう委任を受けた規則において「著しく不当に賛美(略)するように、描写し又は表現」とは言えないものを定めれば委任の範囲を超える。
 施行規則15条2項二号では「社会的に是認されているものであるかのように描写し若しくは表現」と定めているところ、批判するように描写又は表現していないというだけで規則が定める要件に該当するとすれば条例の委任の範囲を超える。条例の委任の範囲を超えないようにするには「社会的に是認されているものである」旨を述べている必要があると解するのが妥当。

http://www.asahi.com/articles/ASG5Q7VY1G5QUCVL01N.htmlによると、東京都は「よくないことだと表現されていない」ならば条例8条1項二号「著しく不当に賛美(略)するように、描写し又は表現」→施行規則15条2項二号「社会的に是認されているものであるかのように描写し若しくは表現」という要件に該当するという解釈らしい。
 これは「著しく不当に賛美(略)するように、描写し又は表現」という要件を定める条例8条1項二号から基準を定めるよう委任を受けて制定された施行規則15条2項二号中の「社会的に是認されているものであるかのように描写し若しくは表現」という要件の解釈としては許されない。

(現物が入手できたら続く)

(5の1)条例8条1項二号中の「青少年の健全な成長を阻害するおそれがある」。

この要件が何を意味するかについては、立法者が意図したものという観点からみると、犯罪類型に関しては以前から条例8条1項一号「販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、青少年に対し、著しく性的感情を刺激し、甚だしく残虐性を助長し、又は著しく自殺若しくは犯罪を誘発するものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの」により著しく犯罪を誘発するものについては規制されていたことや条例8条1項二号中の「青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく妨げる」という文言からみて、実際に犯罪を誘発するものであるかは問わず立法者が不健全であると考える思想を青少年が持つ可能性があればこの要件に該当するということを意図したものと考えられ、近親相姦類型についても基本的には同様と考えられる。

また、東京都議会(平成22年12月8日)における「この改正案は、性犯罪の描写を閲覧した青少年が、当該犯罪を犯すことを防止することを直接の目的とするものではないことから」という答弁からも、それが窺える(ただし、「直接の」という部分についてはどう読むべきかの問題は残る)。

しかし、

(続く)

(5の2)「青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの」における「青少年」。

この要件に該当するかの判断に際し、どのような青少年を基準とすべきかについては、結論から書けば通常の17歳11ヶ月の青少年を基準としなければならない。理由は以下の通り。

条例8条に該当するとして不健全図書に指定されたものは条例9条1項により「青少年」(条例2条一号により18歳未満の者を意味する)に対する販売等が禁止される。

ところで、ある図書が成人にとっては有害ではないが青少年にとっては有害とされる場合、青少年に対する販売等を禁止することはできるとしても、成人に対する販売等を禁止することはできない。これは「成人にとっては有害ではないが青少年にとっては有害」という規制理由と「成人に対する販売等を禁止」という規制内容が合致していない以上当然のこと。
 なお、有害図書の自動販売機への収納規制は合憲とされているけれど(最高裁平成元年9月19日判決)、青少年への販売等を規制する手段であることと成人に対する販売等を完全に禁止するわけではなく成人が当該図書を入手する手段を「幾分」制限するにとどまるものであることによる。

同様に、通常の17歳11ヶ月の者にとっては有害ではないが通常の小学生にとっては有害であるとされる場合、小学生に対する販売等を禁止することはできるとしても、17歳11ヶ月の者に対する販売等を禁止することはできない。繰り返しになるけれど、「通常の17歳11ヶ月の者にとっては有害ではないが通常の小学生にとっては有害」という規制理由と「通常の17歳11ヶ月の者に対する販売等を禁止」という規制内容が合致していない。

もし、「青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの」という要件に該当するかの判断に際し、通常の17歳11ヶ月の者を基準とすれば「健全な判断能力の形成を妨げ、健全な成長を阻害するおそれがある」とはいえないが通常の小学生を基準とすれば「健全な判断能力の形成を妨げ、健全な成長を阻害するおそれがある」とされる場合にこの要件に該当するとすれば、通常の17歳11ヶ月の者にとっては有害ではないが通常の小学生にとっては有害であるという理由で通常の17歳11ヶ月の者に対する販売等まで禁止することになる。

(6)不服申立てについて。

各都道府県条例に基づく有害図書・不健全図書指定は行政庁の処分なので(福岡高裁宮崎支部平成7年3月1日判決・判例タイムズ883号119頁、東京地裁平成15年9月25日判決・裁判所HP東京高裁平成16年6月30日判決・裁判所HPなど)、不服申立て手段は、①行政不服審査法に基づく異議申立て、②処分取消訴訟、③処分無効確認訴訟の3つ。ただし、③は要件がきついので処分取消訴訟ができるなら処分取消訴訟の方が良い。
 なお、不健全図書指定処分取消請求を棄却した1審判決に対する控訴を棄却した上記福岡高裁宮崎支部判決に対する上告を最高裁平成11年12月14日判決・集民195号641頁は棄却しているので有害図書・不健全図書指定は処分に該当するという点については決着済みとみられる(処分に該当しないなら訴えを不適法却下するはず)。

①行政不服審査法に基づく異議申立て。

行政不服審査法は平成26年6月6日に改正されたもののまだ施行されておらず、また附則3条により施行前の処分に係るものについては従前の例によることになっているので現在効力を有するもの(改正前のもの)による。

都条例に基づく都知事の処分には上級行政庁は存在せず、また、東京都青少年健全育成条例などには不健全図書指定処分について審査請求できる旨は見あたらないので、行政不服審査法4条1項、6条一号により異議申立てが可能。
 異議申立期間は行政不服審査法45条により「処分があつたことを知つた日の翌日から起算して六十日以内」。「処分があつたことを知つた日」は少し微妙で、不健全図書指定処分は条例8条2項により告示によって行うことになっていることを重視すれば告示があった日(最高裁平成14年10月24日判決・民集56巻8号1903頁参照)。ただし、東京都は不健全指定処分をしたときは各図書類販売業者等にハガキで通知しているみたいなので「処分のあったことを現実に知った日」という解釈もありうる。

行政不服審査法4条1項柱書本文「行政庁の処分(この法律に基づく処分を除く。)に不服がある者は、次条及び第六条の定めるところにより、審査請求又は異議申立てをすることができる。」は不服を申し立てることができる人間を限定していないように見えるけれど、最高裁昭和53年3月14日判決・民集32巻2号211頁により「当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者」に限られる。
 行政事件訴訟法9条1項の「当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」についても「当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者」をいうとされており(最高裁平成元年2月17日判決・民集43巻2号56頁)、条文の文言は違っても結局は同じ。

東京地裁平成15年9月25日判決・裁判所HP東京高裁平成16年6月30日判決・裁判所HPは図書の発行者について処分取消訴訟の原告適格を認めているので、図書の発行者(今回は株式会社KADOKAWA)については異議申立てができると考えられる。
 他に異議申立てできる可能性があるとすれば、発行者に準ずる者として著作者、不健全図書指定処分により当該図書を青少年に販売等してはならない義務・包装義務・区分陳列義務(条例9条)を負う図書類販売業者等、不健全図書指定処分により当該図書を東京都内で図書類販売業者等から購入したりできなくなる青少年。

(続く)
プロフィール

Author:stuvw

民放4局以下地域在住。
アニメ視聴はBSなどで。

最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
最新コメント
検索フォーム
FC2カウンター
Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ